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日本史の叛逆者82

时间: 2019-05-24    进入日语论坛
核心提示:「兄様」 間人が人目もはばからず、中大兄にしっかりと抱きついた。「待て、ここでは」 さすがに、中大兄がたしなめた。 周囲
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 「兄様」
 間人が人目もはばからず、中大兄にしっかりと抱きついた。
「待て、ここでは」
 さすがに、中大兄がたしなめた。
 周囲には、漢殿に妻の額田、それに鎌子も駆けつけている。
「かまいませぬ」
 間人はかえって強く抱きついた。
「——こうなって嬉しゅうございます」
 ささやく声が耳に届いた。
 中大兄は驚いて、
「なぜだ。皇后の地位を失うことになるのだぞ」
「かまいませぬ」
 間人は繰り返した。
 うるんだ瞳には、喜色すら浮かんでいる。
 中大兄は、その間人を押しのけるようにして、身の自由を取り戻した。
 そして物問いたげに鎌子を見た。
「御無事で何よりでござりまする」
 鎌子は頭を下げた。
「どうする」
 中大兄は血走った目で言った。
「こうなったら、非常の手段をとるしかございません」
 鎌子は重々しい口調で言った。
「まさか——」
「いや、それは違いまする」
 中大兄が何を言おうとしたか、鎌子はなぜそれをとどめたか、誰の目にもわかった。
 帝をこの際、この世から消す——そのことである。
「では、どうする?」
「都を捨てましょう」
「捨てる? 逃げるのか?」
 心外そうに中大兄が言った。
「いいえ」
 鎌子は首を振って言った。
「都を戻すのでございます。飛鳥の古京へ」
「何だと」
 中大兄は目をむいた。
 漢殿以下、その場にいた者全員が驚いた。
 なんという大胆な策であろう。
「しかし、都を遷すには、帝の勅《みことのり》がいるのでは——」
「その帝は、皇太子様を憎んでおられます」
「——」
「それゆえ、仕方がありませぬな。母君さえこちらの味方について下されば、難しいことではないと存じます」
「帝はどうする?」
 その問いに、鎌子は少しうつむいて、しかしはっきりした声で言った。
「お連れ申し上げるわけには参りますまい。お嫌でございましょうし、来られては、この策が生きませぬ」
「で、では、帝を置き去りに——」
「はい」
「鎌子、それでよいのか?」
 中大兄は思わず言った。
「よろしゅうございます。あとは皇太子様が心を強くお持ちになることでございます」
「——」
「母君を説いて、左大臣以下百官すべてに呼びかけるのでございます」
「ついて来てくれるであろうか?」
「そこが賭けでございます。しかし、勝算ある賭けと存じます」
 中大兄はまだ混乱していた。
 帝を置き去りにして、都を遷すなど、この国始まって以来のことである。
 本当にうまくいくのだろうか。
「——そちはどう思う」
 中大兄は漢殿にすら意見を求めた。
「はい、死中に活を求める良策かと存じます」
「しかとそう思うか?」
「はい、このまま座して事の推移を待つよりは、はるかに良いと思います」
 中大兄は間人も見た。
 間人は黙ってうなずいた。
「よし、ならば、皆も一蓮托生《いちれんたくしよう》だぞ」
 中大兄は叫んだ。
(そのようなことを仰せにならずとも、黙ってついて来いとお命じになればよいのに)
 鎌子は心の中で深い溜息をついた。
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