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日本史の叛逆者106

时间: 2019-05-24    进入日语论坛
核心提示: 中大兄は、母への弔意を示すため麻の衣を身にまとって政務を執った。 とりあえず為すべきは、軍団の編制であり、百済王子の余
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 中大兄は、母への弔意を示すため麻の衣を身にまとって政務を執った。
 とりあえず為すべきは、軍団の編制であり、百済王子の余豊璋をいかにして故国へ送り届けるかであった。
(とりあえず軍兵五千をつけて、国へ送り返そう。将軍は誰をつければよいか)
 いま、この国で、最も優秀な将軍といえば阿曇比羅夫《あずみのひらふ》と阿倍《あべ》比羅夫の両名であった。
 しかし、この二人は手元に置いておきたい。
(狭井《さいの》檳榔《あじまさ》あたりがよいか)
 中大兄はそう考えた。
 檳榔は中堅どころの武将で、なかなかよく働く。戦いというよりは、むしろ守りに向いている。今度の任務は、無事に豊璋を送り届けることが第一で、戦う必要はない。
(よし、檳榔に決めた)
 中大兄は決断した。
 他にやることは山のようにある。
(母の遺骸は、やはり飛鳥へ返した方がいいかもしれぬ)
 中大兄は、少し考えを変えていた。
 場合によっては、この地に仮埋葬してもいいと初めは考えていたが、反発の声が耳に届くようになっていたのである。
 親不孝という不評である。
(仕方がない、仮の葬礼でも行なうとするか)
 大葬をするには、いろいろと仕度がいる。人数だけ揃えばいいというものではない。
 内臣《うちつおみ》の鎌子《かまこ》でもいれば、相談に乗ってくれようが、彼は飛鳥に留守居役として置いてきてしまった。
 八月に入って、中大兄は朝倉宮の傍らで、仮の葬礼を執り行なった。
 日が沈む直前、棺は仮の霊屋《みたまや》に遷され、中大兄はその前に主だった臣を集め、弔辞を読み上げた。
 大海人もその中にいる。
 日の沈むのは、まだ遅かった。
 暮れなずむ広場の中で、ふと大海人は目前の山を見上げた。
 山というよりは丘といった方がいいのかもしれない。
 その山の上に、黒い見事な馬にまたがった一人の武人が見えた。その面体は笠に覆われていて、よくわからない。だが、大海人には、それが誰かすぐにわかった。
(父上!)
 大海人は、すぐにもそこへ駆けて行きたいと思った。しかし、葬礼の式を中座するわけにはいかない。
「——虫麻呂《むしまろ》」
 大海人は小声で呼んだ。
「はっ」
 虫麻呂は、たちまち影のように現われた。
「父上、いや、あの笠の御方のところへ行け。そして申し上げるのだ、母上の遺言があります。ぜひお伝えしたい、とな」
「——」
「何をしておる、早く行け」
 大海人は叱咤した。
「はい」
 虫麻呂は走り去った。
 その頃になると、他の人々も丘の上の男の存在に気付いていた。
「あれは何者だ」
「鬼ではないか」
「違いない。大笠を着た鬼じゃ」
 そんな言葉が聞こえた。
(鬼ではない)
 大海人は、そんなことを口にする人間の胸倉をつかんで、訂正したい衝動にかられた。
 あれはわたしの父なのだ。そして、ここに眠る母の夫《つま》なのだ、と。
 しかし、それを言ってどうなるものでもなかった。
(母上、お許し下さい。わたしは何も言わずここに立っているばかりです)
 大海人は母の霊に詫びた。
 ふと、大海人は異様な視線を感じた。
 振り返ると、中大兄が憎々しげに自分をにらんでいた。
 大海人はにらみ返さずに、目を伏せた。
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