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日本史の叛逆者135

时间: 2019-05-24    进入日语论坛
核心提示: 男は、その頃、都から少し離れたところにある廃屋で、新羅《しらぎ》からの新しい知らせを受け取っていた。 使者は口上で述べ
(单词翻译:双击或拖选)
 男は、その頃、都から少し離れたところにある廃屋で、新羅《しらぎ》からの新しい知らせを受け取っていた。
 使者は口上で述べた。
 下手に書状に書いたりすれば、途中で奪われる恐れもある。
「沙《さ》|※[#「冫+食」、unicode98e1]《さん》様、それで御返答は?」
 使者は新羅語でたずねた。
 沙※[#「冫+食」、unicode98e1]様と呼ばれた男は、悲痛な顔をして、
「ただちに返答は出来ぬ」
「は?」
「だが、必ず、我が国にとってよきようにはからうとお伝えしてくれ」
「かしこまりました」
「それで、いつ来るかな?」
「遅くとも来年の冬までには参りましょう」
「あと一年か」
 男は嘆息した。
「——苦労であった。下がってよい」
「ははっ」
 使者が下がると、男は沙摩《さま》を呼んだ。
 沙摩は道行《どうぎよう》亡き今、配下の中で最も手練《てだれ》である。
「何か、悪いお知らせでも?」
 沙摩には予感があった。
「うむ」
 男はうなずいて、
「長安に忍び入りし間者の報告によれば、大唐はついに、日本と和を結び、わが新羅を討つという方針を決めたそうだ」
 沙摩は息を呑んだ。
 それこそ、新羅人にとって、最も恐れていた事態である。
 北の唐と南の日本が手を組めば、新羅を挟み撃ちできる。
 まさに亡国の危機だ。
「どうなさいます」
「それを今、考えておるところだ」
 男は腕を組んで、じっと考え込んでいた。
 肝心なことは、日本が唐の申し入れに乗るか乗らぬか、ということである。
 もし乗れば、本当に亡国の危機だ。
 日本の兵は強い。
 しかも、唐の侵攻に備えて、帝は軍備の拡張を続けている。
 臨戦態勢だ。
 すなわち、いつでも出兵出来るということでもある。
 しかも、今の帝は、新羅に対して憎しみを抱き続けている。
 唐が対新羅同盟を申し入れた場合、それに乗る公算が非常に大きい。
(どうすべきか)
 男は考え続けた。
 一つの手段として、今のうちに帝を暗殺してしまうことが考えられた。
 だが、これは危険の大きい賭けだ。
 もし、これが新羅の仕業だとわかったら、逆に日本の国論は打倒新羅で統一されてしまう。
 帝の後継者は、必ず唐との同盟に踏み切るだろう。
「そちはどう思う」
 男は沙摩にたずねた。
 沙摩は迷わずに、
「——かの御方を暗殺すべしと考えます」
「いや、それはまだ早い」
 男はあわてて言った。
「なぜでございましょう」
「かの帝が、唐との同盟に踏み切るかは、まだわからぬ」
「されど、唐よりの使者が来てからでは遅うございますぞ。手遅れになったら何と致します」
「——」
 男は痛いところを突かれたと思った。
 確かに、それが一番不安だ。
 この国の出方を見ているうちに、唐の使者がやって来たら、帝はさっさと態度を決めてしまうかもしれぬ。
 そうなってから暗殺しても、今度は絶対に新羅が疑われる。
 だから、今のうちにやれ、というのが、沙摩の考えなのである。
(それはわかる。充分にわかる、が)
 男は迷っていた。
 他に手はないのか。
 唐の使者を殺しても、その代りはいくらでもいる。
 唐を今以上に刺激することもまずい。
 とどのつまりは、沙摩の手段しかないのか。
(だが、今しばらくは様子が見たい)
 と、男は思った。
 先手を打つのもいいが、じっくり構えて待つことも戦略のうちである。
 ふと脳裏に、息子の大海人のことが浮かんだ。
(今頃、何をしておるやら)
 その大海人が、都を捨てて吉野に逃れたことは、まだ男の耳に入っていなかった。
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