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日本史の叛逆者142

时间: 2019-05-24    进入日语论坛
核心提示: 決断をしたというものの、大海人の足取りは重かった。虫麻呂がいつの間にか、目の前にいた。「皇子様、お察し申し上げます」 
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 決断をしたというものの、大海人の足取りは重かった。虫麻呂がいつの間にか、目の前にいた。
「皇子様、お察し申し上げます」
 大海人は、黙って虫麻呂を見た。
「今さら、何を言っても始まらんのだ。ここまでくる間に、何とかできなかったものか」
 つぶやくように、その言葉を漏らした。
「もともと、こうなる運命であったように、わたくしは思います」
 虫麻呂はそう言った。
「運命か。運命といえば、母を同じくしながら、父は日本と新羅に分かれるということから、すでにこの運命は始まっていたのかもしれない」
「皇子様、栗隈郷の長、酒麻呂との連絡にはわたくしがまいりましょう」
「そうしてくれるか」
「皇子様も、お心を強くお持ちになりませんと」
「わかっている」
「では、まいります」
 いつもは、いちいち断らない虫麻呂が、わざわざそう言って去ったのは、大海人の心のうちを思いやってのことである。そのことは、大海人にも十二分にわかった。
 大海人はそのまま家に帰ったが、一言も口をきかなかった。
 その様子に、妻の|※[#「盧+鳥」、unicode9e15]野《うの》が気がついた。
「あなた、いったいどうなさったのです」
 大海人は答えなかった。これが答えられるはずもない。
「何か、心に期すことがおありならば、わたくしに話してください。それが夫婦というものではありませんか」
「それはわかっている」
 大海人は、その日帰って初めて言葉を口に出した。
「このことは、知らぬ方がいいかもしれぬ」
「何が起こったというのですか」
 ※[#「盧+鳥」、unicode9e15]野は問い詰めた。
「この国の危機が迫っている。その危機を防ぐためには、あることを為さねばならぬのだ」
「帝を討つと仰せられますか」
 ※[#「盧+鳥」、unicode9e15]野が突然そう言ったので、大海人は驚いて妻の顔を見た。
「わかりますとも」
 ※[#「盧+鳥」、unicode9e15]野は言った。
「あなたの妻です。あなたがどのような立場におかれ、何をお考えになっているのか、察しがつかなくてどうします」
「だが、わたしはそれが正しいことかどうか、本当は今も決めかねているのだ」
 と、大海人は言った。※[#「盧+鳥」、unicode9e15]野は励ますように、
「もし、あなたがそれを正しいとお考えになるならば、たとえ誰が反対してもおやりになるべきです。人がいかなることを言っても、それは気にしなければよいではありませんか」
「だが……」
 大海人は、あえて言った。
「わかっているのか。帝は、そなたの父なのだぞ。その父を、わたしは討とうとしているのだ」
「わかっています」
 そう言って※[#「盧+鳥」、unicode9e15]野は、燃えるような目で大海人を見た。
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