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中国怪奇物語016

时间: 2019-05-28    进入日语论坛
核心提示:  空園の中の美女 元和二年のことである。塩鉄使(塩と鉄の生産販売を管理する官)の李遜(りそん)の甥にあたる隴西(ろうせ
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   空園の中の美女
 
 
 
 
 元和二年のことである。塩鉄使(塩と鉄の生産販売を管理する官)の李遜(りそん)の甥にあたる隴西(ろうせい)の李黄(りこう)に、任官の内命があった。そこで李黄は家族をつれて長安へ行き、辞令が出るのを待つことにしたが、なかなか出ない。ある日、暇つぶしに下男をつれて馬で東市(とうし)へ行ってみたところ、一台の牛車がとまっていて、車の中から五、六人の下女が買い物をしているのが眼についた。近づいて行って中をのぞくと、白衣をまとった若い女がいた。この世の人とは思われぬほどの美女である。李黄は思わず下女の一人に声をかけた。
「どこの、どなたなのです」
 するとその下女がいった。
「袁(えん)家のお嬢さまです。李(り)家へ嫁がれたのですが、旦那さまが亡くなられて喪(も)に服しておいででした。ところが、ようやく喪が明けましたので、ここへ衣裳を買いにいらっしゃったのです」
「衣裳を買いに? 再婚なさるおつもりで?」
 李黄がそういうと、下女は笑って、
「さあ、どうでしょうか」
 といった。李黄はそこで、金を出して錦や綾絹などを買い、「これを奥さんに」といって女中に渡した。
「奥さまがどうおっしゃいますか」
 女中はそういって白衣の女のところへそれを持って行ったが、しばらくすると戻って来て、
「奥さまのお言伝(ことづ)てです。衣裳の代金は一時拝借させていただきます。どうかこの車のあとについて荘厳寺(しようごんじ)の傍のわたくしの家までおいでくださいませ。お金はそこでお返しいたしますから——。そういうお言伝てでございました」
 といった。もう日暮れどきだったが、李黄はよろこんで、牛車のあとについて行った。
 女の家に着いたときには、すっかり日が暮れていた。牛車が中門をはいると、女が車から下りた。すると下女たちが幕をひろげ、女をその中にかくして奥へはいって行った。李黄が馬から下りると、下女が腰掛けを持って来て掛けさせ、
「お金が出るまで、今夜ここでずっとお待ちくださいますか。今夜でなくてもよろしいのでしたら、このあたりのお知りあいのところにお泊りになって、明朝おいでくださっても結構でございます」
 というのだった。李黄がむっとして、
「お金を返すからついて来るようにといわれたので、ついて来たんです。このあたりに知りあいなんかありません。ずいぶんおかしなことをおっしゃるのですね」
 というと、下女はいったん奥へはいって行ったが、すぐまた戻って来て、
「お知りあいがないのでしたら、こちらにお泊りくださいませ。ただ、ゆきとどきませんけれどおとがめくださいませんように」
 といって、李黄を奥へ案内した。
 奥へはいって行くと、中庭に青い衣裳の老女が立っていて、
「あの子の伯母(お ば)でございます」
 と挨拶して、席をすすめた。しばらくすると女が出て来た。裳(もすそ)は輝くばかりに白く、肌も白く、きめこまかく、物腰はしとやかに言葉つきは奥ゆかしく、さながら仙女のようであった。その美しさに李黄が茫然としていると、女は挨拶をすませて、さっと引き返して行った。すると老女が席についていった。
「あの子は羞(は)ずかしいのでございましょう。ところで、いろいろな品を買っていただきまして、まことにありがとうございました。わたくしどもで先日来(せんじつらい)買い求めました品のうち、今日の品にかなうものは一つもございません。でも、それだけに気がかりでならないのです、お借りいたしました金額のことが——」
「いや、お金のことなど、どうか、ご心配くださいませんように。あの程度の物では美しいおかたのお召し物には不足だったと思っているのですから」
 李黄がそういうと、青衣の老女は、
「あの子を、そんなにお気に入ってくださったのですか」
 といい、そして、
「ふつつかな娘で、あなたのような立派なおかたにふさわしいとは思いませんけれど、それにわたくしども貧乏暮らしで三万銭ほどの借金もあるのですけれど、それでもお気に入ってくださるのでしたら、どうかおそばに置いてやってくださいませ」
 と辞を低くしていうのだった。李黄はよろこんで承知し、その老女に拝礼し、「さて、三万銭だが……」と考えた。そのとき、ここからさほど遠くないところに叔父(お じ)の李遜が両替屋を持っていることを思い出し、下男を呼んで三万銭を借りて来るようにいいつけた。
 下男が金を借りて戻って来ると、老女はおしいただくようにしてその金を奥へ持って行った。
 しばらくすると西側の部屋の扉があけられた。そこには食事の用意がととのえられていた。老女が李黄を案内して席につかせると間もなく、白衣の女がはいって来て、伯母にうながされるままに李黄の向い側の席についた。数人の下女が食事の世話をし、食事が終ると酒宴になり、ほどよく酔いがまわるころお開きになって、李黄と女は伯母に導かれて別の部屋へ引きとった。その部屋で李黄は女と歓(かん)を尽し、未だかつて覚えたことのないほどの深い陶酔を味わった。
 それから三日間、李黄は心ゆくばかり楽しんだが、四日目になると伯母が、
「いちどおうちへお帰りになった方がよいでしょう。あまりおうちをおあけになると、奥さまもご心配でしょうし、叔父さまもご機嫌をそこなわれるかもしれませんから。こちらへは、お通いになればよろしいのですから。でも、あまり間遠(まどお)になってあの子をさびしがらせるようなことのないようにしてやってくださいませ」
 といいだした。李黄も辞令のことが気になっていたので、いちど家へ帰ってみる決心をし、女に別れを告げて馬に乗った。そのとき下男は李黄の躰(からだ)に妙ななまぐさい臭いをかいだが、口には出さずに馬のあとについて家へ帰った。
 李黄は家へ帰ったとたん、躰がだるくなり、しかも目まいがしだしたので、寝てしまった。すると妻の鄭(てい)氏が寝台の傍に来て、
「どこへ行っていらっしゃったのですか。あなたの任地がもう決ったというのに——。昨日、お役所から呼び出しがあって、あなたをさがしたのですけど見つからないものですから、わたしの二番目の兄が代りにお役所へ行って辞令をもらってまいりました」
 といったが、李黄は躰がだるくてならず、口をきく力もなく、ただようやく、
「すまなかった」
 といっただけだった。そこへ妻の兄がやって来て、
「いったい、どこへ行っていたんだ」
 と責めた。李黄はだんだん気が遠くなって行くのを感じながら、口の中で「すまん、すまん」と繰り返していたが、しばらくすると妻にむかって、
「もうだめだ」
 といった。そのとき妻は李黄の着ている掛蒲団が風船のしぼむように沈んで行くのを見て、あわててめくった。すると、李黄の躰は水のように溶けてしまっていて、首から上が残っているだけであった。
 家の者がおどろいて、いっしょに行った下男を呼んで聞きただしたところ、下男はくわしく事の次第を話した。そこで袁家があったという場所をさがしあててみたところ、そこは空園で建物も何もなく、さいかちの木が一本繁っているだけであった。そのさいかちの木の根もとに一万五千銭が置いてあり、高い枝の上にも同じく一万五千銭が置いてあった。近くの人たちに聞いてみると、
「あの木の下にはときどき大きな白蛇があらわれます。あの庭にはずっと誰も住んではおりません」
 ということであった。女が姓を袁(えん)といったのは、空園(くうえん)(園という字のまわりを空(くう)にすると袁になる)に住んでいることから、そういったのであろう。
唐『博異志』 
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