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中国怪奇物語018

时间: 2019-05-28    进入日语论坛
核心提示:  玄陰池(げんいんち) 太原の商人に石憲(せきけん)という人がいた。 唐の長慶二年の夏、北方へ商いに行って、雁門関(が
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  玄陰池(げんいんち)
 
 
 
 
 太原の商人に石憲(せきけん)という人がいた。
 唐の長慶二年の夏、北方へ商いに行って、雁門関(がんもんかん)を越えたが、日盛りの暑気にあてられて眼がくらみ、道ばたの大樹の下に倒れ込んでしまった。
 しばらくすると、一人の僧が通りかかって、声をかけてきた。
「暑さにやられなさったか」
 その僧は褐色の衣(ころも)を着ていて、顔も姿もどこか異様に見えたが、親しそうに話した。
「わたしは五台山の南に庵(いおり)を構えておりますが、そのあたりは森も深く、水も清く、俗塵を離れた静かなところです。わたしはそこへ帰るのですが、あなたもいっしょにおいでになりませんか。そのままでは暑さにあたってどうなるかわかりませんよ」
 僧は石憲の荷物を背負って、「さあ」とうながした。石憲がついて行くと、やがて森が見えた。森の中へはいって行くと大きな池があって、大勢の僧が泳ぎまわっていた。
「この池は玄陰池といって、わたしたちはここで水浴をして暑さをしのいでいるのです」
 僧はそういって石憲を池のほとりの平たい石の上に掛けさせた。泳いでいる僧たちを見ているうちに、石憲は突然、背筋のつめたくなってくるような恐怖をおぼえた。どの僧の顔もみな同じで、眼鼻だちが少しもちがっていないことに気づいたからだった。
 そのとき、案内してきた僧が石憲にいった。
「おききください。僧たちがこれからいっせいに梵音(ぼんおん)を唱えますから」
 たちまち池の中の僧たちが声をそろえて何やら唱えだした。その声は次第に高くなって、思わず「うるさい!」と叫びそうになるほどだった。叫ぶかわりに両手で耳をおおうと、一人の僧が水の中から手をさし出して、石憲を池の中へ引きずり込んだ。池の水は氷のようにつめたく、石憲は身ぶるいをして岸へ這いあがろうとしたが、どうしても這いあがれないのだった。
 もがいていると、
「どうしたんだね、こんなところで」
 という声がきこえてきた。眼をあけて見ると、道ばたに二、三人の人が立っていて、自分を見おろしているのだった。そこは、もとの大樹の下だったのである。もう日が暮れかけていた。着物は水の中から出てきたばかりのように、ずぶ濡れになっていて、寒気(さむけ)がしてならなかった。
 その夜は近くの村人の家に泊めてもらった。翌日になると気分もよくなっていたので、旅をつづけることにした。山添いの路を進んで行くと、蛙の鳴く声がそうぞうしく聞こえてきた。石憲はその鳴き声があの池の中の僧たちの梵音に似ているように思われてならなかったので、記憶をたどりながら西の方へ山路をたどって行くと、やがて深い森があり、森の中には大きな池があった。そしてその池にはたくさんの蛙が泳いでいた。
「坊主はこいつらだったのか」
 そう思いながらさがすと、その蛙の群れの中には一匹の大きな褐色の蛙もいた。
唐『宣室志』 
 
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