廬江(ろこう)郡の耽(たん)県と樅陽(しようよう)県との境(さかい)一帯の山野には、大青小青というものが住んでいて、ときどき、かれらの泣き声が聞こえてくる。かれらは多いときには数十人も集まり、そのなかには大人も子供も男も女もいて、ちょうど葬式のときのような悲しそうな泣き声をあげる。
かれらの泣き声が聞こえてくると、近くの人々はその声の方へ走って行ってみるのだが、かれらの姿が見えることは滅多にない。だが、泣き声のしたあたりの家には、必ず不幸がおこるのである。泣き声が大きいときにはたいてい大家(たいけ)に不幸がおこり、小さいときには小さな家におこることが多いという。
六朝『捜神記』