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中国怪奇物語041

时间: 2019-05-28    进入日语论坛
核心提示:  駅舎の怪 孟不疑(もうふぎ)という挙人(きよじん)がいた。昭義(しようぎ)の地を旅していて、ある駅舎に泊ったときのこ
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   駅舎の怪
 
 
 
 
 孟不疑(もうふぎ)という挙人(きよじん)がいた。昭義(しようぎ)の地を旅していて、ある駅舎に泊ったときのことである。
 夕方、駅舎にはいって、足をすすごうとしていると、〓青(しせい)の張(ちよう)という役人が大勢の供をつれて乗り込んできた。孟不疑は張を高官と見て挨拶をしたが、張は酒気を帯びた顔をちょっと向けただけで、無視して挨拶を返しもしない。孟不疑は腹がたってならなかったが、抗(あらが)うこともできず、そのまま割りあてられた部屋へはいって休んだ。
 張の部屋は孟不疑の部屋の隣りだった。張は酔った勢いで、しきりに威張り散らしている。大声で駅舎の役人を呼びつけ、
「焼餅(シヤオピン)を持って来い!」
 などとどなっているのだった。横暴なやつだ、と孟不疑はいよいよ不快をつのらせながら、そっとのぞいて見ると、しばらくして駅舎の下男が焼餅を盛った大きな皿を運んで来た。ところが、その皿の下に、影のような黒いものが皿といっしょに動いているのが見えた。その黒いものは豚のような形だったが、燈火の下まで来ると消えてしまった。張はそれに気づいていない様子だったが、孟不疑はその黒いものが消えた瞬間、にわかに恐怖をおぼえた。
 その恐怖のために孟不疑はなかなか眠ることができなかったが、隣りの部屋からは高鼾(たかいびき)が聞こえて来た。供の者はみな遠くの部屋へ引きとっていて、その部屋には張が一人で寝ていたのである。高鼾はつづいていた。孟不疑は三更(十二時)ごろまで眠れずにいたが、やがて疲れてうとうとしたかと思ったとき、ただならぬ物音が聞こえてきて眼をさました。そっと隣りの部屋をのぞいて見ると、張が黒衣の男と取組(とつく)みあいをしているのだった。取組んだままで倒れてころげまわったり、離れて殴りあったり、馬乗りになって殴りつけたり、殴られたり、張と黒衣の男と、どちらがどちらともわからぬほどの激しい格闘がつづいているのだった。息を殺して成りゆきを見守っていると、やがて張がざんばら髪で諸肌(もろはだ)ぬぎのまま、どたりと寝台の上へ倒れ込んだ。いかにも疲れ切った様子だったが、しばらくするとまた高鼾をかいて張は眠ってしまった。黒衣の男はいつどこへ行ってしまったのか、いくらのぞき込んでも姿が見えなかった。
 夜が明けそめるころになっても孟不疑は眠ることができなかった。と、隣りの部屋でごとごとと音がした。気になってならず、またのぞいて見ると、張が髪を梳(くしけ)ずり衣服をととのえているところだった。それがすむと張は、戸口のところへ行って大声で、
「誰かおらんか」
 と呼んだ。すると駅舎の下男がやって来て、
「もう、お立ちで? お食事は?」
 ときいた。張はそれには答えずに、
「隣りの部屋の人は、孟とかいったな」
 といい、
「もう起きているようだ。昨夜は酔っていて失礼したので、おわびをしたいのだが……」
 というのだった。
「お呼びしましょうか」
「うん、わしがこちらでいっしょに食事をしたいといっていると伝えてくれ。そして、すぐ食事を二人ぶん持って来てくれ」
 孟不疑はそれを聞きながら、昨夜のあの騒ぎは何だったのだろう、と考えなおした。眠らなかったはずだが、実(じつ)はずっと眠っていて、あれは夢だったのだろうか、とも思った。
 下男が呼びに来たので、張の部屋へはいって行くと、張はていねいに挨拶をした。
「昨夜は酔っておりましたので、同宿のご挨拶もせず、はなはだ失礼いたしました。おそらく無礼(ぶれい)なやつと内心お咎(とが)めになったことと思いますが、おゆるしください」
 食事が運ばれてくると、張は親しげにいっしょに箸(はし)をとりながら、
「まだ、ほかにもおわびしなければならないことがあります。夜中には、甚だお恥かしいところをごらんに入れました。騒がしくておやすみになれなかったのではないでしょうか。もしそうでしたら、おゆるしください。それに、あのことはどうかご内分にしてくださいますよう」
 というのだった。
「内分にしろとおっしゃるのなら他言はいたしませんが、あれはいったい何だったのですか」
「あの黒衣の男ですか。あれは妖怪なのです。この駅舎にはときどきあらわれるのですが、昨夜打ちのめしてやりましたので、今後はもうあらわれることはないでしょう。わたしが酔っておりましたのも、実は妖怪に隙(すき)を見せて引き寄せるためだったのです。はたして妖怪はわたしを組(くみ)しやすしと見てあらわれました。ご内分にとお願いしましたのは、世間を騒がせたくないからです。……ところで、すぐお立ちですか」
「そのつもりです」
「わたしも間もなく立ちますが、わたしにはおかまいなく、どうぞ先にお立ちください」
 別れるとき張は、靴の中から金の延べ板を一枚取り出して孟不疑に手渡し、
「昨夜のあのことは、くれぐれもご内分に……」
 と念をおした。
 孟不疑はどうも解(げ)せないところがあって気持がすっきりしなかったが、張に別れて駅舎を立った。まだ明け切らない道を歩いて行くと、四、五里ほど行ったところで役人たちが立ち騒いでいるのに出会った。
「何かあったのですか」
 ときくと、
「人殺しですよ。この先の駅舎で、〓青の張という評事(ひようじ)が殺されたのです」
 という。おどろいてさらにくわしくきくと、およそ次のようなことがわかった。
 孟不疑が駅舎を出たあと、張の供の者たちは出発の用意をととのえ、馬を引いて行って張を乗せ、その前後を護って出発した。しばらく行ってから供の一人が、馬だけが歩いていて馬上には張がいないことに気づき、大騒ぎになった。供の者たちが急いで駅舎へ引返して見ると、張が泊っていた部屋の寝台の上に骸骨(がいこつ)が横たわっていた。骨には全く肉がついておらず、寝台の上にもどこにも血は流れていなかった。ただ寝台の下に靴が一足ころがっていたが、それが張評事のはいていた靴だったので、骸骨が張の遺骨であることがわかったという。
 茫然としている孟不疑にむかって、役人の一人がひそかにいった。
「あの駅舎には、ときどきこんなことがおこるのですよ。泊った者が、朝になると骨だけになってしまっているということが——。その妖怪の正体は、いまだにわからないのです」
唐『酉陽雑俎』 
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