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中国怪奇物語084

时间: 2019-05-28    进入日语论坛
核心提示:  黄金の蝶 穆(ぼく)宗(そう)のとき、飛竜隊の衛士に韓(かん)志(し)和(わ)という人がいた。もとは倭(わ)国の人で
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   黄金の蝶
 
 
 
 
 穆(ぼく)宗(そう)のとき、飛竜隊の衛士に韓(かん)志(し)和(わ)という人がいた。もとは倭(わ)国の人である。
 木(き)彫(ぼり)のわざにすぐれていて、鸞(らん)や鶴(つる)、〓(からす)や鵲(かささぎ)などを彫ったが、水を飲んだり鳴いたりして、すこしもほんものとちがわなかった。鳥の腹の中には関(から)捩(くり)が仕掛けてあって、それを動かすと、羽ばたいて百尺ほど舞いあがり空を飛行して、百尺か二百尺の向うへ降りた。
 また、猫も彫ったが、それは自在にかけまわって、雀や鼠をとらえた。
 飛竜隊の隊長は不思議なわざだと思い、そのことを穆宗に奏上した。穆宗は韓志和を召し出し、彼の作った細工物を一つ一つ見たが、見るたびにおどろいて、
「見事だ、めずらしいわざだ」
 とほめた。そして全部見てしまうと、
「ほかに、もっと人のおどろくようなものは作れないか」
 ときいた。韓志和はしばらく考えてから、
「それでは、見(けん)竜(りゆう)の台というものを作ってご覧にいれましょう」
 と答えた。
 何日かして、その台が出来あがった。高さ二尺ほどの台で一見普通の踏(ふみ)台(だい)とかわったところはなかった。
「これが見竜の台か」
 と穆宗は不審な顔できいた。
「さようでございます。このままでは竜は見えませんが、台の上へあがれば見えるという仕掛けになっております」
「わたしにあがって見よというのだな」
 穆宗がそういって台の上へあがったとたん、おどりかかるようにして一匹の竜があらわれた。それは人の背丈に倍するほどの大きさで、鱗(うろこ)も鬣(たてがみ)も、爪も角も、すべてそなわり、雲を得て天に舞いのぼる勢いを見せて、到底作りものとは思えない。穆宗は胆をつぶし、あわてて台から飛び下りて、
「もうよい。運び去れ!」
 といったが、台から下りると同時に竜の姿は消えて、そこにあるのは、もとどおりの格別かわったところもない踏台であった。
 韓志和は、興ざめた顔色の穆宗の前に、平伏していった。
「はからずも陛下をおどろかせ奉り、罪万(ばん)死(し)にあたります。なにとぞ、ほかのわざによって陛下の御目と御耳を楽しませ奉り、幾分なりとも罪のつぐないをすることをおゆるしくださいますよう」
「わたしは、竜をおそれたわけではない。不意にあらわれたのでびっくりしただけだ。ところで、こんどはどんなものを見せようというのか」
「小さなものでございます」
 韓志和はそういって、懐(ふところ)から桐の小箱を取り出した。五寸四方くらいの箱で、蓋(ふた)をあけると、中には赤い小さな虫がいっぱいはいっていた。
「それは何だ」
「蠅(はえ)取(とり)蜘(ぐ)蛛(も)という虫でございます」
「ほんとうの虫か」
「細工物でございます」
「なぜ赤い色をしているのだ」
「丹(たん)砂(しや)で飼っているからでございます。黄金の粉で飼えば黄金色に、真珠の粉で飼えば真珠色になります」
「その虫で何をして見せるのか」
「五列に並べて、舞いを舞わせてご覧にいれます。つきましては、楽(がく)府(ふ)の方々に涼(りよう)州(しゆう)の曲を演奏していただきとうございます。この虫は涼州の曲を最も好みますので」
 穆宗が楽府の者を召し寄せているあいだに、虫はぞろぞろと箱からはい出して、五列に並び、演奏のはじまるのを待っている様子であった。
 やがて演奏がはじまると、虫は曲にあわせて踊りだした。踊りながら五つの列は一糸も乱れずに前進したり、後退したり、あるいは横へ進んだり、交錯して斜(ななめ)の列に形をかえたかと思うと輪になってぐるぐるまわったりして、まるで織物のような美しい模様を描いたが、その踊りはぴったりと曲にあっていた。歌詞がはいるところへくると、虫はいっせいに蠅の鳴くような声をたてて合唱したが、その声もぴったりと曲にあっていた。
 曲が終ったときには、虫ははじめの五列になっていて、いっせいに穆宗に礼をし、そして一列ずつ順序正しく箱の中へもどっていった。
「見事だ。すばらしいわざだ」
 と穆宗は感歎した。
「蠅取蜘蛛という名のとおり、蠅をとらえることもできます」
 韓志和はそういって一匹の虫を掌の上に載せた。数歩はなれたところにいる蠅を指して、
「あれを取れ!」
 というと、人の肩にとまっている蠅であろうと空中を飛んでいる蠅であろうと、虫は、ちょうど鷹が雀をとらえるように、韓志和の掌の上から跳(と)びかかっていって逃がすことなくとらえ、そしてまた彼の掌の上にもどってきた。
 穆宗はますます感歎して、褒美としてさまざまな銀器などを韓志和に与えたが、彼はそれらをみな、惜しげもなく、町の貧しい人々に恵んでやった。
「韓志和は東海の蓬(ほう)莱(らい)山からきた仙人にちがいない」
 そんな噂がたちだしたのは、そのころからである。噂が高くなると韓志和は飛竜隊から姿を消してしまった。町の人々もそれからは彼の姿を見た者はないという。
 穆宗は宮殿の前に幾株もの牡(ぼ)丹(たん)を植えていた。それは千輪の牡丹といって、一枝に千輪の花が咲いた。大輪の紅(くれない)の花で、咲くと宮殿をおおうほどの芳香を放った。
 その花の咲きそめたころから、毎夜、何万ともしれぬ小さな蝶が飛んできて花にとまった。蝶はみな黄金色と真珠色で、光りかがやいて宮殿の前は真昼のような明るさになったが、朝になるとみなどこかへいってしまった。
 宮女たちは夜になると、あらそって蝶をとらえようとしたが、手をのばしても蝶は逃げようともせず、わけなくとらえることができた。とらえた蝶を彼女らは糸でゆわえて、胸に飾ったり髪に飾ったりした。それはきらきらと光りかがやいて美しかったが、夜があけると光りがうすれた。手にとってよく見ると、黄金色の蝶は黄金の、真珠色の蝶は真珠の、ほんとうの蝶にそっくりの細工物であった。化粧箱の中へしまっておくと、夜になるとまたきらきらと光りかがやいて飛び立とうとするのであった。
 穆宗は宮殿の前に網を張らせ、何百羽もの蝶をとらえて宮殿の中へ放ち、宮女たちがそれを追いかけるのを見て楽しんだ。毎夜そんなことをしているうちに、ついに蝶は牡丹の花に集ってこなくなった。穆宗も宮女たちも、もう取りつくしてしまったのだと思ったが、そうではなかった。
 蝶は町の方へ飛んでいったのである。町へ飛んでいった蝶は、どんな花にでもとまったが、殊に貧しい人たちが植えている名もない花に多く群がった。とらえた蝶の細工物は高価に売れた。
 ある日、穆宗は黄金で作った置物を取り出しに宝物庫へはいった。と、その置物はこなごなにくだかれていた。ほかの黄金や真珠の箱をあけて見ると、どれもみなくだかれている。よく見ると、それらの黄金や真珠の破片の中には、半ば蝶の形になっているものが幾つもあった。
 穆宗ははじめて、あの蝶が、このごろ姿を消してしまった飛竜隊の韓志和のしわざであることをさとった。さっそく宝物庫の中を隅々までさがさせたが、韓志和の姿はなかった。さらに宮殿の中もさがし、町も、裏町の陋(ろう)屋(おく)や打捨てられた小屋まで、あますところなく探索させたが、どこにも韓志和の姿はなかった。
 その後、不思議な蝶は飛ばなくなった。
唐『杜陽雑編』 
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