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中国怪奇物語125

时间: 2019-05-28    进入日语论坛
核心提示:  白い田螺 常州の義興県の小役人に、呉(ご)堪(かん)という人がいた。 両親に早く死にわかれて兄弟もなく、まだ妻をめと
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   白い田螺
 
 
 
 
 常州の義興県の小役人に、呉(ご)堪(かん)という人がいた。
 両親に早く死にわかれて兄弟もなく、まだ妻をめとる余裕もなくて、ひとり暮しをしていた。家は荊(けい)渓(けい)のほとりにあったが、呉堪はこの川の清らかな流れが好きで、柵(しがらみ)を作って川がよごれないようにし、役所から帰ってくると、いつもその柵にたまっている木ぎれや芥(あくた)を取りのぞいて、川をきれいにすることを日課にしていた。
 ある日、呉堪は川の掃除をしていて、白い田(た)螺(にし)を見つけた。めずらしいと思い、拾って家に帰り、きれいな壺の底に砂を敷き石を置き、水をいれて、その中で飼っておいた。
 その翌日から呉堪が役所から帰ってくると、いつも家には夕食の支度ができていた。これまでにも隣家の小母さんが、ひとり暮しを気の毒に思って、ときどき世話をしてくれていたので、こんども小母さんの好意だろうと思っていたが、あまり幾日もつづくので不審に思い、お礼かたがた小母さんにたずねた。
「いつも夕食の支度をしておいてくださって、ありがとうございます。ところで小母さんは、どうして毎日、あんな面倒をみてくださるのです?」
 すると小母さんは笑いながら、
「なにをいってるんだね」
 といった。
「あんたがいくらかくしても、わたしにはちゃんとわかっているんだから」
「それは、どういうことです?」
「あんたはどこからかきれいなお嫁さんをもらってきて、家事をやらせてるじゃないか。なぜかくしているのだね」
「そんなことはありません。かくしてなんかいません」
「それならきくが、あんたが役所へ出かけたあと、いつも、きれいな顔の、きれいな着物を着た若い女の人が出てきて、あれこれと家事をやっているけど、あれは誰だというのだね」
 呉堪は小母さんにそういわれて、そのきれいな女というのは、あるいは白い田螺の化身かもしれぬと思った。
 そこで翌日、役所へいくふりをして出かけ、しばらくしてそっともどってきて家の外からのぞいていると、部屋から若いきれいな女が出てきて台所へはいり、炊事をしはじめた。
 呉堪が裏口からとびこんでいくと、女はすこしもさわがず、呉堪にていねいに礼をして、
「わたしは天界から、あなたのお嫁になるようにと遣(つか)わされた者です。天の神さまはあなたが川を大切になさることも、低いお役目をまじめにつとめておられることも、貧しくてお嫁をもらうことができないことも、みんなご存じです。それでわたしに、お嫁にいくようにおいいつけになったのです。どうかお疑いにならずに、わたしをあなたのお嫁にしてくださいませ」
 呉堪はうれしくてならず、
「わたしのような者でよかったら……」
 といった。すると女は美しい顔をほころばせて、
「そんなに卑(ひ)下(げ)なさるものではありません。天の神さまのお心を動かしたほどの立派なお方ですのに。でも、そこがあなたのよいところなのでしょう」
 といった。
 呉堪はさっそく女をつれて隣家の小母さんのところへゆき、わけを話したが、小母さんは信ぜず、また笑いながら、
「なにをいってるんだね」
 といった。
「かくしきれなくなって、そんなごまかしをいっている! なににしてもおめでたいことだ。仲よくおやり」
 そしてその夜、祝いの酒をとどけてくれた。二人はその酒で床(とこ)杯(さかずき)を交し、夫婦になって仲むつまじく暮したが、呉堪の美しい妻のことはたちまち近隣の噂になって、町中にひろまっていった。おそらく呉堪の妻と肩を並べることのできるような美女はこの県にはいないだろうという噂だった。
 ところで、このときの義興県の知事は凶暴な人で、呉堪が美しい妻をもらったという噂をきくと、小役人のくせにしゃらくさい! と思い、なんとかして呉堪を罪におとしいれて、その妻を自分のものにしようと思案をめぐらした。ところが呉堪はお役目大事につとめていて、いくらあらさがしをしようとしても見つけられない。思案にあまった知事は、ある日、呉堪を呼びつけてこういった。
「今日の午後、蝦(が)蟆(ま)の毛と鬼の腕が必要なのだ。おまえは事務に練達しているからたのむのだが、この二つの品をいそいで手に入れてきてほしい。もし手に入らぬときは軽い罪ではすまぬぞ」
 呉堪はかしこまって外へ出たが、そんなものが手に入るはずはない。悄然として家へ帰ると、妻が、
「いったい、どうなさったのです」
 とたずねた。呉堪がわけを話して、
「なぜか知らないが、知事は難題をふっかけてわたしを罪におとしいれようとしておられるようだ」
 というと、妻は、
「それは、わたしのせいです。知事はあなたを罪におとしいれておいて、わたしを横取りしようとたくらんでおられるのです」
「うん、おそらくそうだろう。おまえと別れるのはつらいが、横取りされるよりはましだ。おまえはまた白い田螺になって、天へもどっていってくれ。わたしも白い田螺になって、おまえといっしょに天へいけたらなあ……」
 呉堪がそういって涙を流すと、妻は、
「ご安心なさいませ」
 といった。
「蝦蟆の毛と鬼の腕ですね。ほかの物ならともかく、その二つならわたしが手に入れることができます。しばらく待っていてください、すぐに取ってきますから」
 そういって妻は出かけていったが、しばらくするともどってきて、その二つの物を呉堪にわたした。
 呉堪がそれを持って役所へゆき、知事にさし出すと、知事はその二つの物を調べて、不興げに、
「よし。退(さが)っておれ」
 といった。
 翌日、知事はまた呉堪を呼びつけて、いいつけた。
「昨日はご苦労だった。今日はどうしても蝸(か)斗(と)が一つ必要なのだ。おまえは事務に練達しているから特にたのむのだが、早く手に入れてきてくれ。もし手に入らぬときは死罪はまぬかれないぞ」
 呉堪は家へかけもどって、また妻に相談をした。すると妻は、
「ご安心なさいませ、蝸斗ならすぐ手に入ります。しばらく待っていてください」
 といって出ていったが、しばらくすると一匹の獣を引いてもどってきた。それは犬に似ていた。妻が、
「これが蝸斗です」
 というので、
「いったい、これにどんな力があるのかね」
 ときくと、妻は、
「これは火を食べるという珍しい獣です。火を食べると、火の糞をたくさんします。早く役所へ送りとどけて、あなたはすぐ帰ってきてください。かならず、すぐ帰ってきてくださいね」
 といった。
 呉堪はさっそくその獣を役所へ引いていって、知事にさし出した。知事はそれを見て、
「これが蝸斗か。これはただの犬ではないか」
 と怒った。呉堪が、
「犬に似てはおりますが、犬ではなくて蝸斗でございます」
 というと知事はますます怒って、
「どこが犬とちがう」
 という。
「蝸斗は火を食べます」
「うん。そういうことはきいたことがある。これが火を食べたらよし、食べなかったらおまえを死罪にするぞ」
 知事はそういって炭を持ってこさせ、火をおこして、その獣に食べさせた。蝸斗が火を食べだすと、知事は呉堪に、
「よし。退っておれ」
 といった。呉堪は妻がいったことを思いだして、いそいで家へ帰った。
 呉堪が家に帰ったころ、役所では蝸斗が糞をしだした。それはみな火であった。知事は怒って、
「呉堪を呼べ! こんな獣がなんの役に立つか」
 といい、下役人に火を消して糞の掃除をするように命じたが、下役人の持った箒(ほうき)が糞に触れたとたん、ぱっと焔があがって、火が建物に燃え移り、一瞬のうちにあたりは焔と煙につつまれて、知事もその家族もその中で焼け死んでしまった。
 それからは荊渓のほとりの家にも、どこにも、呉堪とその妻の姿は見られなくなった。
 この火事があってから義興県の県城の位置はもとの県城の西へ移った。今の県城がそれである。
唐『原化記』
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