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中国怪奇物語171

时间: 2019-05-29    进入日语论坛
核心提示:  行商人の妻と役人の妾 唐の太宗を輔佐した功臣の一人に、唐倹(とうけん)という人がいる。 その唐倹の若いころの話である
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   行商人の妻と役人の妾
 
 
 
 
 唐の太宗を輔佐した功臣の一人に、唐倹(とうけん)という人がいる。
 その唐倹の若いころの話である。あるとき、呉楚(ごそ)の地方へ行こうとして、驢馬(ろば)に乗って洛陽のあたりを通ったが、途中でひどくのどがかわくのを覚えた。ちょうど道端に小屋があって、二十(はたち)あまりの女が一人、窓ぎわで縫いものをしていたので、
「娘さん、すまんがお湯を一杯くださらんか。のどがかわいてならんので」
 と言った。すると女は、
「はい。しばらくお待ちください」
 と言って立ちあがり、小走りに隣りの家へはいって行った。家の中から、
「おばさん、お湯を一杯くださいな。通りがかりのお役人さんがのどがかわいたとおっしゃるので」
 と言う声がきこえ、まもなく女が碗を持って出てきて、
「中へはいって休んでいただくとよいのですが、ごらんのとおりの、一部屋きりのあばらやで……」
 と言って、碗をさし出した。
 唐倹が部屋の中をのぞき込むと、ほんとうにあばらやで、台所もなければかまどもない。不審に思って、
「このお湯は……」
 と言うと、女は、
「はい。隣りからもらってきたのです。うちでは火を使いませんので」
 と言う。
「どうして火を使わないのです?」
「貧乏で、炊事もできません。隣り近所から食べものをもらってやっと暮しております」
 女はそう言いながら、また縫いものをはじめた。
「一人で暮していらっしゃるのですか」
「わたしは娘ではございません。薛良(せつりよう)という貧乏な行商人の妻なのです。夫といっしょになってからもう十年あまりになるのですが、まだ一度も夫の両親の家へ帰っておりません。明日の朝、両親の家からお迎えがきますので、せめてこれを手土産(て みやげ)にと思って、急いで縫っているのです」
 女が縫っているのは靴下だった。
「結婚してから十年あまりになるとおっしゃったが……」
 二十あまりにしか見えないが、すると、ほんとうの年は三十前後なのだろうか。身なりはみすぼらしいが、よく見ればなかなかの美人だ。唐倹はそう思って、心をひかれた。
「はい。十年とすこしになります」
「そうは見えない。ご主人はずっとお帰りにならないのですか」
「はい。旅に出てからもう五年になります」
 女は靴下を縫う手を休めずにそう言った。
「五年も……。こんなに美しい奥さんを一人にしておいて……。おさびしいでしょう」
 唐倹はそれとなく女の気をひいてみたが、女はそれに気づくと、黙って首を横にふって、せっせと縫いものをつづけた。唐倹は恥じ入って、銭二緡(ふたさし)を置き、礼を言って驢馬に乗った。
 それから十里ほど行ったところで、唐倹は洛陽の旅舎に必要な書類の一部を置き忘れてきたことに気づき、取りにもどろうとして道をひき返した。翌朝、洛陽の近くまで行ったとき、葬式の行列に出会ったので、誰の葬式かとたずねると、
「行商人の薛良の柩(ひつぎ)です」
 と言う。昨日の女の夫と同じ名なので、びっくりして、どこまで運ぶのかときくと、
「わたしは薛良の兄ですが、弟は結婚してから五年目に妻を亡くして、その遺骸を洛陽の城外に仮埋葬したのです。それから五年たって、こんどは弟が旅で死にましたので、郷里の先祖の墓地へ埋葬しに行く途中なのですが、十年前に仮埋葬した弟の妻の柩を掘り出していっしょに運び、先祖の墓地へ弟とともに葬ってやろうと思って、これからそこへ行くところなのです。墓はすぐこの近くです」
 唐倹は不思議に思いながら行列について行った。行列は昨日唐倹が湯をもらったところでとまった。そこには昨日の小屋も、隣家もなく、ただ幾つかの塚があるだけだった。
 やがて墓が掘りかえされた。唐倹がのぞいて見ると、掘り出された柩の上には銭が二緡(ふたさし)と、新しい靴下が二足、置いてあって、一足には父上様、一足には母上様と書いた紙が添えられていた。
 唐倹は悲しい気持におそわれながら、不思議なことと感じ入った。
 
 洛陽の旅舎で、置き忘れた書類を取ってから、唐倹は東へ東へと旅をつづけ、ある日、揚州の禅智寺の近くの旅舎に泊った。
 唐倹はそのとき奇妙な光景を見た。禅智寺の裏山の墓地で、二人の役人風の男がそれぞれ数人の人夫を連れ、すこしはなれたところで、めいめい墓を掘りかえしているのである。おそらく棺が朽(く)ちたので取りかえようとしているのだろうと思ってながめていると、やがて、棺を掘り出した人夫たちが、両方とも、朽ちた棺を指さしながら顔を見あわせ、口々に何か言いながらどっと笑いだしたのである。そして、一方の墓を掘らせた役人風の男は茫然と棺をながめ、一方の役人風の男は鍬で棺をたたき割りながら何やら大声でどなりつけているのだった。
 唐倹はいったい何ごとがおこったのだろうとあやしみ、そばへ行って人夫にきいてみた。
「いったいどうしたのです? 墓を掘りかえして笑ったり、どなったり……」
「いや、なに、一年ほど前からおかしなうわさがありましてね」
 と一人の人夫が言った。
「こちらの韋(い)家の墓と、むこうの裴(はい)家の墓から、毎晩、男と女の亡霊が出てきて逢引(あいびき)をし、どちらかの墓から雲雨の声がきこえてくるといううわさなんですよ。このあたりの人たちには亡霊の姿を見たと言う人や、雲雨の声をきいたと言う人がたくさんおりましてね、うわさが大きくなるばかりなので両家で掘りかえしてみたというわけですよ」
 そこへ、さきほど茫然としていた人がやってきて、唐倹に一礼して言った。
「わたしは前(さき)の太湖の県令で、韋璋(いしよう)と申します。あなたはどなたで?」
 唐倹が名を言うと、その人は言った。
「さきほど人夫からおききになったとおりです。いま掘りかえしたのはわたしの息子の柩で、ここに埋めてからもう十年になります。人夫たちが笑ったのは、息子の靴が片方なく、かわりに女の靴が片方はいっていたからなのです。恥かしいことですが、やはりうわさのとおりでした。向こうの墓にいるのは裴冀(はいき)といって、前の江都の県尉(けんい)(県の属官)です。掘りかえしたのは彼の妾(めかけ)の遺骸です。日ごろ寵愛していた妾ですが、彼が着任してから二年目に亡くなり、ここへ葬ってから一年になります。彼はうわさを信じなかったのですが、このたび任期が満ちて帰ることになり、捨てて行くに忍びず、棺を洛陽まで持ち帰るつもりで掘りかえしたのですが、あけてみたところ、靴が片方なくて、かわりに男の靴が片方はいっているのを見て、かっとなって棺をたたき割っていたのです。そこをあなたに見られたというわけでして……。うわさのとおり、彼の妾はここへ葬られて以来、わたしの息子とどういうきっかけでか不義をはたらくようになり、絶えずゆききしているうちに、うっかり靴を片方とりちがえてしまったものと見えます」
 唐倹はその話をきいて、しみじみと考えた。行商人の妻は死んでから五年になるのに、なお夫の父母につかえようという心を持ちつづけていた。ところが、役人の妾は死ぬとすぐ、亡霊になってほかの男の亡霊と通じあっていたのだ。この分では生きていたときもどうだったか知れたものではない。役人たるもの、そんな女へのかりそめの愛に溺れて、妻をおろそかにしてよいものであろうかと。
唐『続玄怪録』
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