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中国怪奇物語196

时间: 2019-05-29    进入日语论坛
核心提示:  継子いじめの末路 江蘇(こうそ)の東海県に徐(じよ)という者がいて、妻に先立たれたので、陳(ちん)氏という後妻を迎え
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   継子いじめの末路
 
 
 
 江蘇(こうそ)の東海県に徐(じよ)という者がいて、妻に先立たれたので、陳(ちん)氏という後妻を迎えた。
 先妻とのあいだに鉄臼(てつきゆう)という十歳になる息子がいたが、陳氏にはこの鉄臼がじゃまでならない。一年たって自分にも子供ができると、陳氏は鉄臼を亡きものにしてしまおうと思い、自分の子に鉄杵(てつしよ)という名をつけて、
「おまえがもし鉄臼を殺してしまわなければ、わたしの子ではない!」
 と祈った。相手が鉄の臼(うす)なら、こちらは鉄の杵(きね)で搗(つ)きつぶしてやろうという思いで、鉄杵という名をつけたのだった。
 鉄杵が生れてからは、陳氏は鉄臼を些細(ささい)なことを理由にして打ったりたたいたり、折檻(せつかん)を加えたりした。腹を減らしていても食べ物をやらず、寒さにふるえていても着るものをやらない。徐はたよりない男だったうえに、留守のことが多かったので、陳氏は思いのままに鉄臼をいじめることができた。
 こうして鉄臼は、残忍な陳氏に五年間、責めさいなまれたあげく、ついに杖でたたき殺されてしまった。年は十六であった。
 鉄臼が死んでから十日あまりたったとき、突然その亡霊が家に帰ってきて、陳氏の寝室の棟木(むなぎ)の上にのぼって言った。
「わたしは鉄臼だ。なんの罪もないわたしを、よくもむごい目にあわせて殺したな! わたしの母親が天帝に怨みを訴えたところ、天の役所からおゆるしが出たので、あなたに怨みを晴らしにきたのだ。鉄杵を病気にかからせて、わたしが受けた苦しみと同じ苦しみを味わわせてやる。鉄杵を冥府へ連れて行くのは一月あとときまっているから、それまでわたしはここで待っているぞ」
 家の者には亡霊の姿は見えなかったが、その声ははっきりときこえた。それは生きていたときと少しもかわらない声だった。
 それ以来、鉄臼の亡霊は棟木の上に住むようになった。陳氏がひざまずいて、いくらあやまっても、亡霊は、
「責め殺しておきながら、あやまったらそれですむと思うのか!」
 と言い、陳氏が供え物をしても、
「飢え死にさせておきながら、いまさら食べ物を供えて何になる!」
 と言って、ゆるそうとはしない。ある夜、陳氏が、
「ああ、どうしたらよいのだろう。執念ぶかい亡霊だ」
 とつぶやくと、とたんに棟木の上から声がして、
「執念ぶかいと? 五年間もわたしを苦しめつづけたうえ、たたき殺しておいて、よくもそんなことが言えたものだ! この棟木をひき切って頭の上へ落してやるぞ」
 と言うと同時に、ごしごしと鋸(のこぎり)をひく音がきこえて、木くずが落ちてきたが、しばらくすると、家がぐらぐらと揺れて棟木が落ちかかってきた。家の者は肝(きも)をつぶして外へ逃げだしたが、あかりをつけて照らして見ると、棟木はもとのままで何の異状もなかった。
 鉄杵は鉄臼の亡霊があらわれた日から病気になり、からだじゅうが痛み、腹がふくれて絶えず吐きけをもよおして苦しんでいたが、鉄臼の亡霊はその鉄杵に向って、
「おまえは、わたしが飢えているときも腹いっぱい食べ、わたしが凍えているときも暖かい着物を着、わたしがおまえの母親に折檻されているときも黙って見ていたが、それで気持がよかったのか! わたしの苦しさがどんなものだったか知らせるために、おまえを家ごと焼き殺してやろう」
 と言った。鉄杵が、
「助けて……」
 と言うと同時に、その寝台から火の手があがり、炎と煙がすさまじい勢いで吹きだした。陳氏が炎の中から鉄杵を抱きあげて外へ逃げだすと、火はぱっと消えてしまって、家の内外には何の異状もなかった。
 鉄杵の病気は日ましに悪化して、顔や手足は骸骨のようになりながら腹だけが大きくふくれ、しきりに飢えを訴えたり寒さを訴えたりしだした。鉄臼の亡霊は棟木の上から陳氏に言った。
「さあ、よく見なさい。あなたがどうやってわたしを殺したか」
 その声のするたびに、鉄杵のからだを杖で打つ音がきこえて、青い痣(あざ)ができた。
「鉄杵を打たずに、わたしを打って!」
 と陳氏が哀願すると、亡霊は、
「鉄杵を打たなければ、わたしがあなたから受けた苦しみが、どんなものだったかをあなたに知らせることはできない」
 と言った。
 鉄臼の亡霊があらわれてから一月あまりたったとき、また棟木の上から陳氏を呼ぶ声がきこえた。
「鉄杵を冥府へ連れていく期日がきました。あなたがわたしを殺したようにして、鉄杵を連れて行きますから、よく見ていなさい」
 陳氏が泣いて、
「鉄杵を殺すのなら、わたしもいっしょに殺してください」
 とたのむと、亡霊は、
「あなたを殺してしまったら、わたしがあなたから受けた苦しみが、どんなものだったかをあなたに知らせることができない。あなたは生き残って、わたしの苦しみとわたしの母親のかなしみが、どんなに深いものだったかを思い知らなければならない。それが天の役所のお裁きです」
 と言い、同時にはげしく杖で打つ音がきこえて、鉄杵は死んでしまった。
六朝『還冤志』
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