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中国怪奇物語200

时间: 2019-05-29    进入日语论坛
核心提示:  県令の死後の実力 陝西(せんせい)の岐陽(きよう)県令の李覇(りは)は、厳格で気象が荒く、人情味のない人で、県丞(け
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   県令の死後の実力
 
 
 
 
 陝西(せんせい)の岐陽(きよう)県令の李覇(りは)は、厳格で気象が荒く、人情味のない人で、県丞(けんじよう)や県尉(けんい)以下、県の役人たちは一人残らずひどい目にあわされたが、本人は剛直と清廉潔白(せいれんけつぱく)とを信条としていて、一文(もん)の賄賂(わいろ)を取ったこともなく、一片の不正の利を得たこともなかったので、家族の者は李覇が任官する前の貧乏暮しから抜け出すことができずにいた。
 李覇は家族の苦しみをよそに、その清貧をむしろ誇りにしていたが、赴任してから一年後、急病で死んでしまった。
 納棺をすませると、県の役人たちはそれきり、もう一人も来なくなった。李覇の妻は棺をなでて泣きながら言った。
「あなたは一文も残してくださらなかったし、部下の人たちもみなあなたに怨みを持っていて香典をくださる人は一人もありません。あなたの葬儀をどうしてやればよいのですか」
 すると棺の中から李覇の声がきこえてきた。
「おまえ、そう心配することはない。これから姿をあらわして、わしが自分で始末をつけるから」
 その日の午後、李覇は役所に姿をあらわして、
「役人どもをみんな呼び集めろ」
 と命令した。役人たちはびっくりしてみんな馳(は)せ集り、李覇の怒った顔を見上げて、ぶるぶるふるえだした。李覇は一同を見まわして、
「県丞と主簿と県尉はどうした?」
 と言った。誰も答える者がない。
「早々に呼んでまいれ!」
 しばらくして三人がいっしょにやってくると、李覇は大声でどなりつけた。
「そなたたちがこれほど薄情な人間だったとは! そなたたちがいかに生前のわたしをきらっていたとしても、死者に対してはそれ相当の礼をすべきではないか。もはやわたしには何の力もないと思って、そうしたのか。そなたたちには死者であるわたしを殺す力はないが、わたしには、そなたたちを殺す力があるのだぞ」
 言い終ったとたん、三人はばったり倒れて、息が絶えてしまった。
 知らせを受けた三人の家族の者が駆けつけてきた。いっせいにひざまずいて、
「なにとぞ命をお助けくださいますよう」
 と口々に命乞いをすると、李覇は、
「作法どおりに香典を出しさえすれば、生き返らせてやろう」
 と言った。
「命にはかえられません。いかほどでも仰せのとおりに差し出します」
「いや、多くは望まぬ。絹五束でよい」
 三人の家からそれぞれ絹五束がとどけられると、同時に三人は息を吹きかえした。
 三人が家族の者に介抱されながら引きさがってしまうと、李覇は、こんどは二人の秘書官に向って言った。
「わたしは日ごろ、おまえたちには目をかけてやったのに、どうしてほかの者らと同じように薄情なことをしたのだ! おまえたちだけを殺してもあきたりない。まずおまえたち二人の家の馬をみんな殺して、わたしの力のほどを見せてやろう」
 まもなく両家では、持ち馬数百頭が一時に倒れて今にも死にそうになった。両家の者が駆けつけてそのことを二人の秘書官に知らせると、二人は、
「良馬五頭ずつを差し出しますゆえ、おゆるしくださいませ」
 と哀願した。すると李覇は、
「そんなにはいらん。子馬一頭ずつでよい」
 と言った。両家が子馬一頭ずつを贈ると、持ち馬はみなもとどおり元気になった。
 李覇はそれから、ほかの役人たちに向って言った。
「わたしは日ごろ、清廉を旨として贈り物を受けたことはなかったが、もう死んでしまったのだから、諸君は贈り物をしても贈賄ではなく、わたしは贈り物を受けても収賄ではない。わたしの家は一文のたくわえもなく、わたしの葬儀も出せないのだ。どうか諸君、わずかな志でよい、わたしの葬儀のために恵んでもらいたい」
 役人たちはそこで、絹五疋ずつを香典とすることに話をきめた。
 こうして役人の全員からそれぞれ香典をもらうと、李覇はさらに、車を提供する者、馬を出す者、葬儀の行列の世話をする者など、それぞれ役割をきめ、もし違反する者があれば必ず殺すと厳命して、日が暮れてしまったころ、ようやく解散した。
 中一日おいて、後(あと)始末もすっかりすんだので、遺族の者は葬儀の行列を出した。行列が進み出してから、一同は、行列の中央の棺をのせた車の前を李覇が馬に乗って進んでいるのを見た。途中、何度か行列をとめて祭祀をおこなった。そのたびに李覇は馬からおりて供え物を受け、食べ終るとまた馬に乗って出発した。こうして十里あまり進んで郊外へ出てしまうと、李覇の姿は消えた。
 その夜、一行は旅舎に泊ったが、遺族の者が哭礼(こくれい)をささげようとすると、棺の中から李覇の声がして、
「わたしはここで休んでいる。おまえたちも疲れているだろうから、泣くには及ばん」
 と言った。李覇の家は都にあったので、岐陽からは千余里の道のりがある。その長旅のみちみち、旅舎に泊るごとに李覇はいつも、泣くには及ばんと言いつけた。
 ある夜、李覇は棺の中から息子の名を呼んで言った。
「今夜は眠ってはならぬぞ。一行の中の良馬を盗みにくる者がある。よく気をつけているように」
 しかし遺族の者は長旅の疲れで、つい眠ってしまった。するとその夜、はたして馬が一頭いなくなってしまった。夜があけてから息子がそのことを李覇に報告すると、
「用心するようにと言っておいたのに、みんな眠ってしまうとは! だが、疲れているだろうから無理もない。馬はとりもどせるようになっている。この旅舎の東側に、南のほうへ行く道がある。その道をずっと行くと林があって、馬はいまそこにつないである。すぐに取りもどしに行くがよい」
 息子が言われたとおりにその道を行ってみると、はたして林があり、馬はそこにつないであった。
 一行が都に着くと、この不思議をききつけて親類縁者が続々と弔問(ちようもん)にきた。朝から晩までひっきりなしにやってくる客に対して、李覇はいちいち棺の中から応対した。うわさがひろまるにつれて、縁もゆかりもない者までやってくるので、遺族の者は応接にいとまのないほどのいそがしさであった。すると棺の中から李覇が息子に言った。
「みんながやってくるのは、わたしの正体を見たいからだ。広間にわたしの座を作っておいてくれ。みんなに顔を見せてやるから」
 家族の者は言われたとおりに広間に李覇の座を設けた。弔問の人々が広間の前の庭に集って待っていると、しばらくして、
「さあ、簾(すだれ)を上げよ」
 と言う李覇の声がきこえた。家族の者が簾を巻き上げると李覇の姿があらわれたが、その姿を見て人々は腰をぬかさんばかりにおどろいた。首が甕(かめ)のように太く長く、眼は赤くとび出して人々をにらみつけているのである。人々がおどろきさわぐと、首は少しずつ胴の中へ引っ込んで行った。
 李覇はかたわらの息子に向って、
「生者と死者とは住む世界がちがうものなのだ。この家はわたしの長くおるべき場所ではない。早く郊外の地に埋葬してくれ」
 と言った。それと同時に姿が消え、それきり棺の中からの声もきこえなくなってしまった。
唐『広異記』
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