返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

中国怪奇物語210

时间: 2019-05-29    进入日语论坛
核心提示:  泰山の知事 蒋済(しようさい)が近衛軍の司令長官をしていたときのことである。その妻の夢枕に、死んだ息子の亡霊があらわ
(单词翻译:双击或拖选)
   泰山の知事
 
 
 
 
 蒋済(しようさい)が近衛軍の司令長官をしていたときのことである。その妻の夢枕に、死んだ息子の亡霊があらわれて、涙を流しながら言った。
「死者の世界は生者の世界とはちがって、わたしは生きていたときこそ名家の子弟でしたが、冥土では泰山(たいざん)の役所の小使いにされ、毎日こき使われてこんなに痩せ細ってしまいました。そのつらさは口では言いあらわせないほどです。それでお願いがあるのですが、太廟の西の村に孫阿(そんあ)という人が住んでおりますから、その人のところへ行って、わたしをもっと楽な役目に転任させてくれるようにたのんでおいてもらいたいのです。その人は近ぢか、泰山の知事としてこちらへくることになっておりますので……」
 声をかけようとしたとたんに、母親は目をさました。部屋の中を見まわしたが、息子の姿はもう、どこにも見えなかった。夫を起して夢の話をしたが、夫はとりあってくれない。
 ところが、息子の亡霊は翌晩もまた母親の夢枕にあらわれて、
「わたしはいま、新任の知事を迎えにきていて、太廟に泊っております。暇をぬすんで家へ帰ってきたのですが、新任の知事は明日の昼、出発されることになっておりますので、明日になるとなにかといそがしくて、もう帰ってはこられません。どうかもう一度父上におっしゃってください。必ず孫阿さんにわたしのことをたのんでおいてくださるようにと」
 と言い、孫阿の住居とその人相をくわしく話した。
 夜があけてから、母親はまた夫に訴えた。
「ゆうべもまた息子が夢枕にあらわれました。あなたは夢などあてにならないとおっしゃいますが、だまされたつもりで、その孫阿という人をさがしてみてください。もしそういう人がいたら、わたしの夢枕にあらわれたのは、わたしが息子を思うあまりに見た夢ではなくて、息子の亡霊がたのみにきたのだということがおわかりになりましょう」
 そこで蒋済は部下の者を太廟の西の村へやって、孫阿という者の家をさがさせた。と、果して孫阿という者がいて、その人相もそっくりであるという。ただ、孫阿は病気ではなくて、元気に働いているということだった。
 蒋済は部下の者の報告をきくと、涙を流しながら、
「夢などあてにならぬと思っていたが、そうすると妻の夢枕にあらわれたのはやはり息子の亡霊だったのか。あやうく息子のたのみを裏切るところだった。その男が元気で働いているというのは腑(ふ)に落ちないが、元気でいるのならすぐ呼んできてくれ。とにかく息子のたのみだけは伝えておいてやりたいから」
 と、すぐまた部下に孫阿を迎えにやらせた。
 孫阿は近衛軍の司令長官からじきじきのたのみがあるときいて、不審な顔をしながらやってきた。蒋済が会って、妻の夢の話をすると、今日の昼ごろ死ぬときいても少しも恐れる様子はなく、
「それは、ほんとうでございますか」
 ときき返した。
「気の毒だが、息子の亡霊はそう言ったのだ」
 蒋済がそう言うと、孫阿は、
「いいえ。わたしがおたずねしておりますのは、泰山の知事になるということでございます」
「息子の亡霊はそう言ったのだ」
「そうですか。もしそうなら、わたしも満足でございます。それで、坊っちゃんはどういう官職をお望みなのですか」
「楽な職務なら何でもよいと言っていたから、どうか、そうしてやってください」
「承知しました」
「よろしくお願いします。ところで、あなたは息子の亡霊の言うとおりなら今日の昼に死ぬというのに、少しもこわがってはおられない。ほんとうに、こわくもかなしくもないのですか」
「わたしは貧しい家に生れて、この世では立身することができませんでしたが、せいいっぱい生きてきました。人間はいつかは死ぬものです。この世の生命はわずかですが、死後の世界は永遠ですから、かなしいとは思いません」
「そういうお心がけだからこそ、泰山の知事になられるのでしょう。わたしもこれからは心をいれかえようと思います」
 孫阿が帰ってから、蒋済は妻が見た夢のとおりになるかどうかを早く知りたいと思い、役所の門から太廟までのあいだに、十歩ごとに一人ずつ兵隊を立たせて、孫阿の様子をいちいち伝えさせた。
 すると十時ごろ、孫阿の胸が痛みだしたという報告がはいり、正午になると孫阿が死んだという知らせがきた。
 それから一月ほどたったとき、母親の夢枕にまた息子の亡霊があらわれて、
「おかげで、もう転任させてもらいまして、いまは書記になっております。父上によろしくお伝えください」
 と言った。前には痩せ細っていたその姿が、こんどは元気そうで、柔和な表情をしていたという。
六朝『列異伝』 
 
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%