笑府
ある金持の秀才、死んで閻魔大王の前に引き出され、
「おまえは娑婆(しやば)にいたとき贅沢(ぜいたく)をしすぎたゆえ、再び秀才に生れかわらせたうえ、五人の息子をさずけてやろう」
と申しわたされた。獄卒がその裁きをきいて大王にたずねた。
「この者の罪は重うございます。それなのにそのような結構な身分に生れかわらせておやりになるのは、どういうわけでございますか」
すると大王は笑っていった。
「金持に生れかわらせるのではない。貧乏書生に生れかわらせ、大勢の息子を与えて足手まといにし、つらい目にあわせてやるのじゃ」