笑府
けちん坊な金持、客を招いてご馳走をふるまうなどということは一度もしたことがない。
ある日、隣家の人が宴会をするのに手狭だからといって、その金持に部屋を貸してくれとたのんだ。貸賃が取れるので金持はよろこんで貸したが、それを見た人が金持の家の下男に、
「めずらしいこともあるものだな。おまえの家で客を招(よ)んでいるじゃないか」
というと、下男は頭をふってわけを話し、
「うちの主人に招ばれようと思うなら、あの世まで待つことですな」
といった。すると金持がそれをきいて、下男を叱りつけた。
「きさま、うかつなことをいうではない。たとえあの世とはいえ、客を招ぶ約束をきめるなど、もってのほかだ」