笑府
家庭教師は一年契約で、長つづきのしないたよりない職業である。
さて、ある夫婦。夜中に女房が亭主の一物を握って、
「これ、なに?」
ときくと、亭主は、
「先生だよ」
と答えた。
「先生なら、ちょうどここに家庭教師の口があるわ。どうぞおはいりになって」
一儀が終って、翌る朝、女房は食膳に卵二つと酒を添えた。亭主が笑って、
「ははあ、これが先生に対する謝礼というわけか。ところで、先生はどうだったね」
ときくと、女房のいうには、
「とてもいい先生でしたわ。ただ、長つづきしないのが玉に疵(きず)だけど」