笑林広記
亭主の留守をさいわいに女房が男を引き入れているとき、突然亭主が帰ってきた。男があわてて逃げようとすると、女房はおしとどめて、そのままじっと寝たふりをさせておいた。亭主がそれを見て、
「寝台で寝ているのは誰だ!」
とどなると、女房は指を口にあてて、
「しーっ。大きな声を立てないで。あれは隣りの王さんですよ。おかみさんにひどく打たれ、逃げ出してきて、ここに隠れているのだから」
すると亭主はげらげら笑いだして、
「あの寝取られ男め、女房がそれほどこわいのかねえ」