笑海叢珠
昔、ある男が宿屋に泊り、朝になって出かけるとき蓆を盗んで逃げた。
宿屋の主人が男を捕えて役所へ突き出すと、役人はその男に対して死刑の判決をくだした。同僚たちが、
「それは少しひどすぎる」
というと、その役人は首を振って、
「いや、法律の書物に死刑にせよと書いてあるのだ。だからこそ『論語』にも『朝(あした)に道を聞かば夕(ゆうべ)に死すとも可なり』と記されているのだ」
「道(どう)」と「盗(とう)」、「夕(せき)」と「蓆(せき)」は同音である。それゆえ、朝、蓆(むしろ)を盗んだ者は死刑にすべきであるという解釈をしたのである。