笑府
ある宦官(かんがん)が学政官になって任地へ行き、科挙の試験の八股文(はつこぶん)の作文の題に、『論語』から取って「後生可畏焉」という題を出した。『論語』の文は「後生可畏。焉知来者之不如今也」(後生畏(おそ)るべし。焉(いずくん)ぞ来者(らいしや)の今に如かざるを知らんや)である。
学生たちはその切りかたが間違っているのを見て、みな笑った。
「なぜ笑うのだ」
と宦官がきくと、一人の教官が、
「いえ、笑っているのではありません。学生たちは出題が大変むずかしいので、一字減らしてもらうとありがたいといっているのです」
といった。すると宦官は笑って、
「そうか。それじゃ『後』の字を減らして『生可畏焉』としてやろう」