笑府
ひどく足ののろい男がいた。城外に住んでいたが、ある日、城内へ行こうとして昼ごろ家を出たのに、城壁の近くまで行ったときにはもう日が暮れてきた。城外の夜巡り役人がこの男を見て、
「どこへ行く」
とたずねた。
「府庁の近くまで行きます」
と答えると、役人は夜禁の現行犯として逮捕した。
「まだ夜中にならないのに、なんで夜禁を犯したことになりますか」
と抗議すると、
「その歩き方では、府庁の近くまで行くころには、早くみつもっても二更(夜十時)を過ぎる」