広笑府
ある役所の書記、よく字をまちがえる。あるとき陳(ちん)という字の〓(コザトヘン)を右に書いたために、笞打ち二十の罰をくらった。それにこりて、以後は〓(コザト)をすべて左に書くことにきめたために、鄭(てい)という字の〓(オオザト)も左に書き、また笞打ち二十の罰をくらった。
その後、聶(じよう)という人が訴状を書いてほしいとたのみに行ったところ、書記は大いに慨嘆していった。
「わしは二つの耳(〓)のために、これまで合計四十の笞打ちをくらった。もしあんたのために訴状を書いてやったら、こんどは命が危い」