笑海叢珠
女房持ちの貧しい道士、ある家の法事に呼ばれて行ったきり、夜になっても帰ってこない。世帯(しよたい)のやりくりに疲れはてている女房は、腹が立ってならず、ぷりぷりしながら先に寝てしまった。
夜おそく帰ってきた道士、寝ている女房の枕元に、法事の場からくすねてきた供物の包みを置いて、
「おい、供物だ。起きて食え」
といったが、女房は眠ったふりをして返事をしない。道士が部屋を出て行こうとしたとき、女房は空腹のあまりプーッとおならをした。道士はそれを聞きちがえ、ふり返っていった。
「その供物はいつものとはちがうんだ。いい家のものだから、きれいで、ほこりなんかついてはおらんよ。吹かなくっていいんだ」