笑賛
北方では神おろしをする男のことを端公(たんこう)という。さて、ある端公のところに見習中の弟子がいた。ある日、端公の留守中に、神おろしをしにきてほしいとたのみにきた人がいたので、弟子は、まだ太鼓を打つことと歌をうたうことを習っただけで神おろしの奥儀は教えられていなかったけれど、まあなんとかなるだろうと思って、出かけた。
ところが、いざやってみると、いくら祈っても神は乗り移ってこない。そこで仕方なく、口から出まかせに神を引きおろし、いいかげんなことを並べたてて、礼をもらって帰った。そして師匠の端公に、
「さんざんでした」
といって神おろしをした次第を話すと、師匠は大いにおどろいていった。
「まだ教えていないのに、おまえはどうして奥儀を知ったのだ。わしもじつは、そうするだけだよ」