啓顔録
隋(ずい)のとき、馬(ば)という姓の人と王(おう)という姓の人が、いっしょに酒を飲んで冗談をいい合った。
「王さん、あんたの姓は、もとは『二』だったんだろう? あんたがのろのろと歩いていたんで、鼻に『丁(くぎ)』を打ち込まれたというわけだ」
馬という姓の人がそういってからかうと、すぐ相手はいい返した。
「馬さん、あんたの姓は、もとは『匡』だったんだろう? それなのに尻尾を振って馬になり、王旦那を乗せて走っているというわけだ」
聞いていた人たちはみな大笑いをした。