笑海叢珠・笑府
「蘇」という字は、また「蘓」とも書く。
ある家で客を招いて魚の料理を出したが、主人の席の魚は大きく、客の席の魚は小さかった。それを見て客が主人にたずねた。
「蘇州の『蘇』という字はどう書きましたかね」
「草かんむりの下に、左に『魚』の字、右に『禾(いね)』の字ですよ」
と主人がいうと、客は、
「『魚』の字を右の方へ置くのもありますが、あれはどうなんでしょう」
「『魚』は左右どちらへ置いてもよいことになっているのです」
「そうですか」
客はそういって、自分の席の魚と主人の席の魚とを置きかえて、
「それなら、こうしてもよろしいのですね」