笑苑千金
ある金持の老人、三人の息子とその三人の嫁がいたが、息子たちがみな商売に出て留守のとき、三人の嫁を呼んでいった。
「わしももう年で、いつまで生きておれるかわからない。金銀の装身具を少しばかり持っているので、この際、それをおまえたち三人に平等に分けてやろう。そのほかに金の腕輪が一対と金のかんざしが二本あるが、これは、おまえたちに詩を一首ずつ作らせて、よく出来た者にやることにしよう」
「ありがとうございます。それではお父さま、詩の題を出してください」
「題は何でもよい。ただ、七言絶句(ごんぜつく)で、尖(せん)・連(れん)・眠(みん)という脚韻(きやくいん)を踏めばよい」
まず、長男の嫁が一首を披露した。
春笋出時繊繊尖
(筍出たとき尖(とが)っている)
笋殻落時到垂連
(竹皮落ちて垂れ連なる)
風吹竹葉微微動
(風が吹けば葉は揺れる)
馬鞭却在泥裏眠
(根鞭(ねむち)は地下で眠ってる)
つづいて次男の嫁が披露した。
蓮蕋出時繊繊尖
(蓮の花出て尖っている)
荷花謝時到垂連
(花落ちる時垂れ連なる)
風吹荷葉微微動
(風が吹けば葉は揺れる)
藕根却在泥裏眠
(蓮根(れんこん)地下で眠っている)
最後に三男の嫁が披露した。
奴家十指嫩繊尖
(私の十指は尖っている)
胸前〓子却垂連
(乳房は二つ垂れ連なる)
公公肚上微微動
(父さんの一物硬(お)え動く)
我在公公肚下眠
(私は抱かれて眠ってる)
「うまい、うまい」
老人は手をたたいてほめ、腕輪とかんざしを三男の嫁に与えた。
この話をきいて、一家の者はみな腹をかかえて笑った。