笑苑千金
渡し舟の船頭が、ある日の夜明けごろ、和尚と婦人を乗せて川の中ほどまできたとき、
「自分のことを詠(よ)んだ詩を一首作ってくださったら、渡し賃はただにしますがどうです?」
といった。そしてまず、自分で一首を吟じた。
船児是雖小 (舟は小さいけど)
四辺江水遶 (ぐるりは川の水)
才到五更鐘 (夜明けになると)
載過一船了 (向うの岸に着く)
和尚はそれをまねて一首を吟じた。
寺院是雖小 (寺は小さいけど)
四辺松樹遶 (ぐるりは松の木)
才到五更鐘 (夜明けになると)
看経念仏了 (読経念仏をする)
つづいて婦人も一首を吟じた。
行貨是雖小 (物は小さいけど)
四辺茅草遶 (ぐるりはしげみ)
才到五更鐘 (夜明けになると)
和尚出来了 (坊主が出ていく)