啓顔録
唐に法軌(ほうき)という僧がいた。極めて矮小(わいしよう)な体をしていたが、学識は深く、それを鼻にかけるところがあった。李栄(りえい)という人がその鼻を折ってやろうと思い、法軌が寺で講義をしているところへ行って、議論を吹っかけようとした。すると法軌は、高座の上で詩をうたった。
姓李応須李
(姓は李(り)だから李(すもも)の木だろ)
名栄又不栄
(名は栄(えい)だが栄(さか)えもしない)
間髪をいれず李栄が歌いつづけた。
身材三尺半
(身のたけわずか三尺半で)
頭毛猶未生
(髪の毛もまだ生えません)