拊掌録・雪濤諧史
孔子の弟子の公冶長(こうやちよう)は鳥の言葉を解した。
あるとき孔子が鳩の鳴き声をきいて、
「あれは何といっているのだ」
とたずねると、公冶長は、
「觚不觚(クープークー)、觚(クー)……(觚(こ)や觚ならず、觚ならんや、觚ならんや——『論語』雍也篇)といっております」
と答えた。またあるとき、孔子が燕の鳴き声をきいて、
「あれは何といっているのだ」
とたずねると、公冶長は、
「知之為知之(チーシーウエイチーシー)、不知為不知(プーチーウエイプーチー)、是知也(シーチーエー)(之(これ)を知るを之を知ると為(な)し、知らざるを知らずと為す、是れ知るなり——『論語』為政篇)といっているのです」
と答えた。またあるとき、孔子が驢馬の鳴き声をきいて、
「あれは何といっているのだ」
とたずねると、公冶長は、
「はて、あれは解しかねます。どうやら田舎なまりのようでございます」
と答えた。