雪濤諧史
よく嘘をいう男、いつもいうことがくるくる変っていく。
「おれのうちに雌鶏(めんどり)が一羽いるが、一年に卵を千個生むよ」
といったものの、人に、
「そんなにたくさん生むわけがない」
といわれると、
「それじゃ、八百個だ」
という。また、
「そんなはずはない」
といわれると、
「それじゃ、六百個だ」
という。また、
「そんなはずはない」
といわれると、しばらく思案して、
「卵の数はもうこれ以上減らすわけにはいかんから、雌鶏を一羽ふやすことにしよう」