嘘の名人(二)
雪濤諧史
ある貴人が二階から、下にいる少年を呼んで、いった。
「おまえは人をだますことがうまいそうだが、わしをうまくだまして下へおろすことができるかね」
すると少年は、
「二階にいらっしゃるあなたをだまして下へおろすなんて、そんなことができるわけはありません。もしあなたが下にいらっしゃるのでしたら、だまして二階へお上げすることはできますけど」
という。貴人が、
「よし、それじゃやってみろ」
といっておりてきて、
「さあ、どうやってわしを二階へあがらせる?」
というと、少年は、
「ほら、あなたをだまして下へおろしたでしょう? それでもう、いいじゃありませんか」