韓非子(説林篇)・淮南子(氾論訓篇)
ある男、娘を嫁にやるときに、ねんごろに言いきかせた。
「夫婦というものは、よほど運がよくなければ長く添いとげることはむずかしい。運がわるいときには離縁されるかもしれない。だから、嫁に行ったら必ず、こっそりとへそくりをためるようにしなさい」
嫁に行った娘は、父のいいつけをまもってせっせとへそくりをためた。やがてそれが姑(しゆうとめ)に知られて、娘は離縁された。
実家に帰ってきた娘は、かなりのたくわえを持っていた。父はそれを見ていった。
「やっぱり、わしのいったことに間違いはなかったろう。たくわえもなしに離縁されたら、どんなにみじめなことか」