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物理の風景09

时间: 2019-07-26    进入日语论坛
核心提示:熱 槽  無限抱擁「熱槽」あるいは「熱溜《ねつだまり》」という概念が物理学ではよく用いられる。ある物質の状態を温度を一定
(单词翻译:双击或拖选)
 熱 槽
  ——無限抱擁
 
「熱槽」あるいは「熱溜《ねつだまり》」という概念が物理学ではよく用いられる。ある物質の状態を温度を一定に保ちながら変化させたときに、それがどのようなふるまいを示すかを論じるさいには、その物質が一定の温度をもつ無限に大きな他の物体(いわば無限に大きな恒温槽)の中に、エネルギーは自由に出入りできるが、物質は出入りできない隔壁をへだててスッポリ包まれていると考えて理論をたてる。この無限に大きな恒温槽を熱槽または熱溜とよぶのである。
 熱槽でスッポリ包んでおけば、注目している物質の状態がどんなに変化しても、その温度は自動的に一定に保たれるから、一定温度下のふるまいを論じるのに都合がよい。ただし物質の状態といっしょに熱槽の状態まで変化してしまうと、そのことまで考慮して理論を作らなければならなくなって、せっかく熱槽を考えた功徳がなくなるので、熱槽と物質との間にエネルギーのやりとりがあっても、熱槽の中ではその影響は無限にうすめられてしまってその状態は変化しないように、大きさを無限大にしておくのである。
 平たくいえば、熱槽は無限に大きな抱擁力をもち、ふところの中で注目している物質がどんなにあばれても悠然とそれを暖かく包んでいる広大無辺な宇宙のようなものである。
 しかしながら、このような理想的な性質をもつ熱槽は、あくまでも物理学者が頭の中で考える仮想的なものであり、実際にはわれわれをとり囲んでいる天地は大きいとはいえ有限である。したがって考える物質が大きすぎたり、あるいは小さくても状態がはげしく変化すると、それ自身も変化し、それが物質のふるまいにハネ返ってくる。
 われわれは母なる大自然の広大な抱擁力になれすぎて、それがたれ流しまでも熱槽と同様に無限にうすめてくれることを無意識に期待し、甘えていたようだ。公害問題はその甘えに対する有限な自然界の当然の報いであろう。
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