——まったくでたらめな雑音
光をスペクトルに分けると、その中にどんな波長の単色光がどれくらいの強さで含まれているかがわかる。単色光とは、一定の波長で規則正しく無限に続く純粋の正弦波で表される光の波である。一般の光はもっと複雑な波の形をしているが、それをいろんな波長をもつ単色光につねに分解することができる。この分解の様子を示すのがスペクトルにほかならない。
光のもつ色あいは、そのスペクトル、すなわちその光がどういう単色光によって構成されているかできまる。太陽の光が白いのは、それがすべての眼に見える単色光を比較的一様な強さで含むからである。
音の波もまた、光の波と同じようにいろんな波長をもつ純粋な正弦波に分解することができる。この分解の様子をやはりスペクトルとよぶ。音の場合、おのおのの純粋な正弦波はいわゆる純音にほかならない。光の場合は波長のちがう単色光が異なる色をもつ光として識別されるのに対して、音の場合には波長のちがう純音は異なる高さの音として聞きわけられる。光の場合と同様に、音のもつ音色は、その音のスペクトル、すなわちその音がどういう純音から構成されているかできまるのである。
白い音というのは、一様なスペクトルをもつ音、すなわちすべての波長の純音を同じ強さで含む音のことで、白色光になぞらえてこうよばれているのである。耳できくと、まったくでたらめな雑音に聞こえるので、ふつう白色雑音とよばれ、これが正式の名前になっている。
音や光以外の波も、またスペクトルに分解することができるが、そのスペクトルが一様であるとき、その波をやはり白色雑音とよぶことがある。その典型的な例は、最も簡単な電気回路の中に自然に発生する電圧の熱的変動である。これを音に直すと、白色雑音を実際に聞くことができる。このほかにも、物理や工学では、いろいろな量の熱的変動に関連して、白色雑音がしばしばあらわれる。