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物理の風景53

时间: 2019-07-26    进入日语论坛
核心提示:スケール  一五インチのミニ鉄道 フランスからイギリスへ鉄道で行くときに連絡船が着く港として有名なドーバーの近くに、ハイ
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 スケール
  ——一五インチのミニ鉄道
 
 フランスからイギリスへ鉄道で行くときに連絡船が着く港として有名なドーバーの近くに、ハイスという小さな港町があるが、そこから南へ向かって軌間一五インチの鉄道が海岸を走っている。これはハーウェイという模型鉄道の愛好家が、小さな鉄道に実際にお客をのせて走らせたくなって、一九二七年に始めたものである。第二次世界大戦中にこの沿岸が要塞化された一時期を除き、現在も「世界最小の公共鉄道」をキャッチフレーズに、人の背よりも低い可愛らしい蒸気機関車が、これもまた断面積が普通の列車の座席の断面積くらいしかないオモチャのような客車をひいて走っているという、面白い鉄道である。
 沿線は牧場と湿原と砂丘の間にサマーハウスのたち並ぶ明るい保養地帯で、避暑客や観光客がけっこう沢山乗って、蒸機列車の旅を楽しんでいた。
 ミニ鉄道ではあるが、駅舎、ホーム、転車台、信号など、普通の鉄道にあるものはすべて揃っており、列車同士がすれちがう時の轟音などもいっぱし一人前である。シートの窮屈さもだんだん気にならなくなり、一五インチ幅の狭いレールも見なれるとそれが当たり前になってしまった。しばらくこの鉄道に乗ったあとで、途中のニュー・ロムニーという駅の近くにあるイギリス国鉄の廃駅の構内に敷かれた標準軌間のレールを見たときは、一瞬巨人国に迷いこんだような錯覚を起こしたものだった。慣れというものは恐ろしいもので、ミニ鉄道に乗っているうちに、鉄道というものがそもそもこういうスケールのものだったかのような気分になっていたのであった。
 もし最初の鉄道が一五インチ軌間で始まっていたら、これが伝統となって、今の鉄道とすっかりちがった鉄道界ができ上がっていたであろうか。それともやはり人間のサイズにちょうど適合したスケールというものがあって、それに結局は落ち着き、現在の鉄道と変わらない姿になっていただろうか。帰りの列車にゆられながら、そんな妙なことをいつか考えていたのであった。
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