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物理の風景66

时间: 2019-07-26    进入日语论坛
核心提示:文士と物理屋  量を重ねて質を生み出す 太宰治が彼の作品の中でこんなことをいっているという話を聞いたことがある。小説家は
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 文士と物理屋
  ——量を重ねて質を生み出す
 
 太宰治が彼の作品の中でこんなことをいっているという話を聞いたことがある。小説家はつねに書き続けなければいけない。一生に一度傑作を書けばよい、それが出来たら死んでもよい、という考え方は文士として失格である、と。実は物理屋の仕事について同じようなことをつねづね考えていたので、太宰のこの言葉は大いに我が意を得てうれしかった。
 物理の研究者の中にも、一生に一度、物理学に新しい展望を開くような画期的な論文を書けばよい、つまらぬ論文をやたらに生産するよりはその方がはるかに立派だ、と考える人が間々あるが、私はそれにはくみしない。例外中の例外である天才は別だが、凡庸な研究者にとっては平凡な、あるいは平凡に見える論文をうまずたゆまず書き続けることなしに非凡な仕事をまとめることは、よほどの幸運に恵まれない限り不可能なのが普通だからである。いいかえれば、量を積み重ねることによって、はじめて質を生み出すことができるのである。
 論文を書かなくても、つねに積み重ねる努力をすればよいではないか、と反論されそうだが、これにも私はくみしない。その理由の一つは、いかによくねったつもりでも、思想というものは頭の中で考えているだけではおどろくほど漠としたものであり、筆をとって文章に表してみてはじめて明確且つ強固になるものであるということである。思考の一つ一つのステップを、論文の形でしっかりとふみ固めていって、はじめてそれが積み重なって非凡なものとなる素地ができるのである。もう一つの理由は、一見平凡に見えることでも、多少とも新しいものの見方や新しい方法が含まれていれば、思わぬところでそれが役立つ可能性がつねにあるのだから下手なひっこみ思案はしないほうがよい、ということである。
 研究も職業とする以上、自分の考えたことで、他人に役立つ可能性のあることは、これを私有せずに発表することが、一つの義務であろう。
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