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物理の風景95

时间: 2019-07-26    进入日语论坛
核心提示:開発途上国の物理学者たち  貧しい日本の受け入れ態勢 アロテイさんはエックス線の散乱の理論を研究しているガーナのクマシ大
(单词翻译:双击或拖选)
 開発途上国の物理学者たち
  ——貧しい日本の受け入れ態勢
 
 アロテイさんはエックス線の散乱の理論を研究しているガーナのクマシ大学の先生で、すでに専門の著書もある立派な理論物理学者である。黒い顔から真白な歯をのぞかせた彼の人なつこそうな笑顔と、廊下でだれかれをつかまえて熱心に議論する大きな太い声はセンターの名物の一つであった。
 サマチヤカニットさんはタイのチュラロンコーン大学の先生で、日本人そっくりの容貌の持ち主。彼の髪がぼうぼうと伸ばし放題の、日本では学生にしか見られないスタイルでなかったら、うっかり日本語で話しかけてしまったかもしれない。固体の理論が専門で、経路積分という難しい計算に熱中しており、議論のさいの舌鋒はなかなか鋭かった。
 スプラプトさんはインドネシアのバンドン大学の物理数学部長だが、まだ三十を半ば過ぎたばかりの若さ。小柄で腰が低く、あいさつの仕方などちょっと日本人に似ていて、穏和な親しみやすい人柄だった。専門は固体の電子論で、滞在中にひと仕事まとめるのだと毎日おそくまで計算に余念がなかったが、たまたまコーヒーラウンジで一緒になった折など、故国の話をよく聞かせてくれたものだった。
 サーさんはインドのバナラス・ヒンズー大学から来た女性物理学者。筆者と最も専門が近く、よく議論をした。早口だがなまりのない英国式発音の英語と、あざやかな話の運び方のおかげで、ヒアリングが苦手の私も、日本語で議論しているときと同じぐらい物理の方に頭を集中させることができた。
 これはイタリーのトリエステの国際理論物理学センターに滞在中私が最もよく接触した、アジア・アフリカの学者たちの点描である。彼等は皆、センターからの帰途欧米の各国に立ち寄ってゆくのだが、異口同音にぜひ一度日本で研究したいと言っていた。実際、これらのすぐれた人たちの議論の相手を欧米の学者にまかせておくのはまことに歯がゆいことで、彼等を迎える態勢の貧しさが惜しまれるのである。
 
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