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物理の風景96

时间: 2019-07-26    进入日语论坛
核心提示:レンヌにて  独創性を生み出す力 なだらかに起伏する丘の上に果てしなく広がる牧場や、こんもりとした木立の多い畠を眺めなが
(单词翻译:双击或拖选)
 レンヌにて
  ——独創性を生み出す力
 
 なだらかに起伏する丘の上に果てしなく広がる牧場や、こんもりとした木立の多い畠を眺めながらパリから西へ列車で三時間ほど行くと、レンヌという町へ着く。
 固体の中の原子の振動状態や、表面を伝わる音波をテーマとして開かれた国際会議に出席するためにこの町の大学を訪れたのは、一九七一年の七月末のことであった。レンヌは人口二十万ほど、町の中心部には長い歴史の香りがしみこんだ石造りの古びた家々が並ぶ情緒ゆたかな町であるが、そういう小都市にふさわしい小ぢんまりした大学を想像していた私は、着いて一望したとき、その広大さに圧倒される思いであった。見渡す限り続く芝生を、ポプラ並木がところどころ区切り、地平線までいっぱいに広がった青空の下にまばらに散在する建物は、一つ一つはかなり巨大であるはずなのに、ちょっとした大きな石ぐらいにしか見えない。真夏というのにさわやかな涼風が肌にしみて、まるで牧場のただ中に佇んでいるような、快い気分だった。
 会議参加者のほとんどは、キャンパスの一隅に三棟ほど建っている学生宿舎の一棟に泊って、ちょっとしたホテルなみといってもよいほどのその設備を享受したのである。
 フランス人は決して会議の運営など上手でなく、日本人ならもっとずっと要領よくやるのだがなあ、と思わせられる不手際がずいぶんあった。物理の研究においても、キュリーやド・ブロイを生んだ昔日の面影はないように見える。しかし、レンヌという地方の一小都市に、こういう雄大な大学を建設する構想力と実行力を依然として持っているのである。
 会議をテキパキ運営する能力もあるに越したことはないが、どちらかといえば小手先のことであり、また真に独創的な研究を生み出す力とは別のことである。彼等の底力を過小評価することはできない。われわれは小手先の器用さに酔って、何かもっと大切なことを忘れていはしないだろうか、と青空に乱舞する美しい雲を仰ぎながら考えたのであった。
 
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