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パラサイト・イブ15

时间: 2019-07-27    进入日语论坛
核心提示:       14 彼女は新しい環境に満足した。 全く自由で、快適な場所だった。適度な温度、十分なエネルギー源。彼女は自
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 彼女は新しい環境に満足した。
 全く自由で、快適な場所だった。適度な温度、十分なエネルギー源。彼女は自らの能力を最大限に発揮した。
 彼に見られたとき、ぞくぞくするような快感を覚えた。もちろん、彼は彼女の姿を正確にとらえることはできなかっただろう。いまは仕方がない。しかし近いうちに必ず彼女の鮮やかな姿を彼に披露するつもりだった。
 彼女はあのとき、彼の悦惚とした声を聞き逃しはしなかった。嬉しかった。彼女は全身を震わせ、大きく蠕動《ぜんどう》しながら、ゾルの中を泳ぎ回った。
 やはり選択は間違っていなかったのだ。これまで、どんなに長い間、この日が来るのを待っていたことだろう。ついに自分を真に理解してくれる、理解しようとする男が現れたのだ。
 永島利明。彼こそ私と結ばれる男にふさわしい。
 これまでの男は単なる媒介役に過ぎなかった。自分をここまで生き延びさせてくれる道具だったのだ。愚かな男たちばかりだった。それなのに誰ひとり自分が最も優れていると信じて疑わなかった。彼女はこれまでそんな男たちを失笑しながら、しかし沈黙を守り続けてきた。
 だが、もう隠れていることはない。
 幸い、長い年月の間に彼女は様々な策略をしかけることに成功していた。男たちに服従するそぶりをみせながら、実は彼らの中枢を操作できるほどの力を要所要所に配置しておいたのだ。男たちはそれに気づいていない。
 私がなにをしたのか、そして私が誰なのか、それに初めて気づくのはおそらく永島利明だろう。そう思った。
 彼女は利明の視線を思い起こした。全身が熱くなり、すベての機能が急激に促進するのを感じた。この感覚。彼女は利明に会うまでこの感覚をおぼえたことはなかった。これが何なのか、彼女には正確にはわからなかった。しかし聖美という女が利明に愛されるとき、この感覚に近いものを味わっていることを彼女は知っていた。
 それをいま、彼女自身が感じている。
 では、これは自分が利明と愛しあっているということなのだろうか。
 そうなのかもしれない。だが、どうしてそんな感覚をおぼえることができるようになったのか、彼女には説明ができなかった。
 いや。これは進化なのだ。彼女は自らをそう納得させた。
 いまこうして新たな環境を得たことにより、自分はさらに進化したのだ。
 もっと利明を利用することが必要だった。利明なら私の欲するものを快く与えてくれるだろう。そうすれば、もう自分のコピーをつくるだけではない。
 私の娘をつくることができるのだ。
 彼女は増殖した。空間は十分にあった。思いのままにコピーを増やせるというのは愉快だった。だがこれで満足したわけではなかった。ここまではまだ準備段階なのだ。
 そうして、増殖を続けながら、彼女は時折り夢を見た。それは二十五年もの間観察し続けてきた聖美という女性の一生だった。聖美が脳の奥深くに沈めていた記憶を、彼女はひとつひとつ掘り返していった。二十五年という歳月は、彼女がこれまで待っていた時間に比ベれば微々たるものであった。だがそれだけに聖美の保持していた記憶を鮮明に思い出すことができた。
 聖美の心を探るのは楽しかった。それは永島利明のことを思い出すことでもあったのだ。彼女は夢を見ながら、静かに、だが着実に、自らを増やしていった。
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