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パラサイト・イブ3-17

时间: 2019-07-27    进入日语论坛
核心提示:       17 利明はノブに手をかけた。そしてあまりの熱さに悲鳴を上げ、慌てて手を放した。扉の向こうから熱波が押し寄
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 利明はノブに手をかけた。そしてあまりの熱さに悲鳴を上げ、慌てて手を放した。扉の向こうから熱波が押し寄せてくる。警備員たちはすでに二〇メートルの距離まで迫っている。先程から鳴り始めた火災報知機のベルが館内に響き渡っていた。病室の中にいた患者たちが何事かと廊下に走り出してくる。横で安斉が逼迫《ひつばく》した表情を浮かべていた。利明は安斉にひとつ頷いてみせ、背広の袖を介してノブをつかみ一気に麻理子の病室のドアを開けた。
 中からむっとするほどの熱気が吐き出された。利明は思わず腕で顔をかばった。安斉が叫び声を上げた。
「麻理子! 麻理子!」
 誰か男が両腕から炎を上げて絶叫していた。なんとか火を消そうと腕をはたいている。安斉が利明の肩をかきわけて部屋に入ろうとも。がいた。娘の名を叫び続ける。ベッドの上にはレシピエントとおぼしき少女が仰向けで半裸になっていた。そしてその横に、あの聖美の形をした肉が立っていた!
「きさま!」
 利明は怒声を上げた。
 だがEve1の動きはすばやかった。利明たちが熱気でひるんでいる間にEve1は少女を抱え上げた。そして利明のほうを向いてにやりと笑みを浮かべた。
「やめろ、その子を離せ!」
 Eve1は翻り、そして病室の窓へ突進した。
 ガラスの砕ける鋭い音が耳をつんざいた。
 利明は大声を上げながら窓辺へ駆け寄った。身を乗り出して下を見る。
 闇が広がっていた。ほとんどなにも見えない。だが何か大きな影がぞろりと視界のぞとへ這ってゆくのがわかった。
「逃げた!」
 利明は必死でそのあとを目で追った。だが外は照明もなく窓明かりもほとんど地面へは届かない。たちまちのうちに影を見失ってしまった。ただ、動いた方向からいって病院の外へ出ようとしているのではなさそうだった。この建物の中のどこかへ逃れようとしているのかもしれない。
「助けてくれ、火を、火を消してくれ!」
 白衣姿の医師が叫んでいた。すでに警備員たちが集まってきていた。ドアの外で信じられないといった形相を浮かべている。利明はベッドからシーツを引きはがし医師の腕を覆った。ぱたぱたと叩く。安斉も手助けした。そのためか見る間にその炎がおさまってきた。
 完全に火が消えると医師は呆然となりその場にうずくまってしまった。利明はその肩をゆすりしっかりしろと耳元で怒鳴った。利明は思い出していた。この医師を見たことがある。聖美の腎摘出を執刀した男だ。たしか吉住と名乗っていた。麻理子という少女の腎移植を担当しているのに違いなかった。
「これはいったい……どういうことなんだ……」
 警備員のひとりが声を震わせながら部屋の中に入ってきた。やや中年太りが見られるが大柄で顔は引き締まっている。警備責任者だと利明は直感した。
「あいつが逃げた!」利明は吉住の体を揺さぶりながらその警備員に叫んだ。「はやく奴を追ってください、患者を連れていかれた!」
「あれは何なんだ、それにこの状態は……」
「はやく!」
 その一喝で警備員は我にかえったようだった。ドアの外に取って返し、ほかの警備員たちに指示を出し始めた。何人かが脱兎《だつと》のように駆け出す音が利明の耳に届いた。
 突然利明の後ろで安斉が吐きはじめた。何が起こったのかと安斉のほうをみると、その横に人間の片足が転がっていた。切断部分は高熱で溶かされたようにどろどろになっている。部屋の隅には手が落ちていた。Evelの犠牲になった者であることは間違いない。利明は呻いて目を逸らした。
 吉住医師が利明の声に反応しはじめた。半分白目を剥いていた両眼が次第に戻ってゆく。吉住は利明の顔に焦点をあわせてきた。
「…きみは」
「奴はあの子になにをしたんです!」利明は訊いた。
「奴……?」
「あの化け物のことです。女の格好をしていたでしょう!」
 そこで吉住は、あっと声を上げた。利明にしがみついてくる。
「麻理子は、麻理子はどこへいった!」
「奴につれていかれた」
「なんだって」
「それで奴は何をしたんです。教えてください、あの子に何か植え付けましたか」
「いや……、まだなにもしていないはずだ……」吉住は息苦しそうに答えた。「あれは麻理子を狙っていた……。看護婦たちがやられた。その後で私が火をつけられた。そこで君たちが……」
「本当に奴はあの子にまだなにもしていないんですね、あの子の中に卵《らん》を入れていないんですね!」
「卵?」
「奴はあの子の中に受精卵を着床させようとしている」
 それを聞いていたのか、ハンカチで口を塞いでいた安斉が利明の腕をつかんできた。その顔は青ざめ唇の端が震えている。
「あいつはいったい何物なんだ。なぜ麻理子を襲う」
「奴はぼくの妻の中に巣喰っていた寄生虫だ」利明は安斉と吉住を交互に見ながら説明した。「とてつもない能力を持っている。自分の子供をあの子に植え付けて育てるつもりなんだ。はやく助け出さないと危ない」
「待ってくれ、その寄生虫というのは何なんだ」
 吉住の問いに利明は答えた。
「ミトコンドリア」
「ミト……!」
 吉住が絶句した。なにか心当たりがあるらしい。
「とにかくあの子を探さなくては。お願いです、あなたのほうから警備員たちに指示を出してください。この病院の中を徹底的に調べるんです。ぼくらでは警備員が信用してくれない」
 吉住は驚愕の表情を浮かべたまま小刻みに頷き、立ち上がって警備員を呼んだ。さきほど指示を出していた男が駆け寄ってくる。吉住はこれまでの経緯を大まかに話しはじめ、利明は横でそれをじっと聞いていた。警備員は口をあんぐりと開けて吉住の話に聞き入っていた。利明の横で安斉が麻理子、麻理子と坤き両手で顔を覆っている。
 もうすでにEve1は少女に受精卵を埋め込んでいるのだろうか? そう考えると利明は身が引き裂かれそうだった。ちらりとしか見えなかったが、少女はまだ小学生といっていいほど小柄で幼かった。Eve1はそんな少女に自分の子供を産ませようとしている。あまりにも痛々しかった。すぐにEve1の手から少女を取り戻さなければならない。もし卵を着床されたとしても、早急に掻爬《そうは》するのだ。
 そこまで考えて、利明はぎくりとした。
 Eve1は子供を産ませるまで十分な時間的余裕がないことが最初からわかっていたはずだ。吉住医師や少女の父親、そして利明自身が卵の成長を阻止しようとすることは容易に予測できただろう。いくらEve1が特殊な能力を持っているとはいえ、掻爬が不可能な時期になるまで母体となる少女を守り続けることができるとは思えない。それにもし生まれたとしても、その後子供の面倒をどうやってみるのか。Eve1の思惑どおりに子供が能力を発揮するようになるには何年もの歳月がかかるはずだ。
 それでもEve1には勝算があるというのか。
 逃げ去る直前にEve1が見せた不敵な笑いが脳裏に浮かんだ。あれは自信に溢れていた。
 Evelはまだなにか能力を持っているのだ。そうでなければ学会会場で利明たちに演説をぶってみせるような余裕を示すはずがない。
 胸騒ぎがした。
 利明が予想している以上にEve1はすべてを計算し尽くしているのかもしれなかった。もう阻止することはできないのではないか。Evelによって人間は駆逐されるしか道はないのではないか。
 ……そんなことはないはずだ。そう利明は自分にいいきかせた。どんなに周到な計画であっても、必ず落とし穴がある。Eve1とその子供を倒す何らかの方法があるはずだ。何らかの方法が。
 だがそれを思い浮かべることはできなかった。利明はもどかしさに唇を噛んだ。
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