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鬼平犯科帳の人生論15

时间: 2019-07-30    进入日语论坛
核心提示:● 養生に身が痩せる[#ここから5字下げ] 彦十も、五十を越えたというより、六十近い年齢になっているし、「若えときから、
(单词翻译:双击或拖选)
 ● 養生に身が痩せる
 
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 彦十も、五十を越えたというより、六十近い年齢になっているし、
「若えときから、下直《げじき》に躰をつかっているものだから、こうなると、どうにもならねえ。おらぁ、死ぬかも知れねえよ」
 などと、見舞いに来た大滝の五郎蔵・|おまさ《ヽヽヽ》の夫婦へ、気の弱いことをいったりした。
 病気の原因は、
「食べすぎ、飲みすぎ」
 なのである。
[#ここで字下げ終わり]
[#地付き]「むかしなじみ」
 
 世をあげての健康ブームである。
 それはよかろう。「健康がいちばん」という言葉もあるからね。けれど、なぜ人はかくも病的に「健康通」を目指すのか。ここまでやる必要ある?
「商売繁盛」「学業成就」「容姿端麗」を目指すのはわかる。だが、健康を目指すとなると、人間として、何かひじょうに大きな間違いをしている気がしてならない。
 そもそも「健康がいちばん」という言葉は、「ある目標を達成するには健康であることが必須条件。だから健康に気をつけなさい」という意味だ。つまり健康は、目的達成のための手段なのである。だが、わがニッポンでは、いつのまにか「目的」と「手段」がひっくり返って、健康が「目的」の座に居座ってしまった。
 テレビや新聞は、まるで日本人全員が「健康という病」にかかっているかのように医療と健康に関する情報を連日連夜流しつづけている。その物言いたるや、「豪華粗品進呈」じゃなかった、「健康のためなら死んでもいいでしょ」といわんばかりである。「弱き者よ、汝の名は健康なり」といいたくなるほど、健康は現代ニッポン人が愛してやまない対象なのだ。
 気になるところを冗談口でいってみると、小生の抜きがたい偏見に、「たいした用のない奴にかぎってケータイを肌身離さずもつ」というのと、「長生きしたってしょうがない人間ほど、健康法に夢中になる」というのがあるが、それは「健康を誇るだけでは、人間として中途半端である。健康であることのはにかみをも同時に抱いていなければいけない」(亀井勝一郎)との言葉に深く共感しているためである。
 そのむかし、「せまい日本、そんなに急いでどこへ行く」という交通標語があったが、「短い人生、そんなに健康になってどこへ行く」と申し述べたい。
 百歩ゆずって、かりに健康の目的が長寿にあるというのなら、日本はもうとっくに世界一の長寿国になっているわけだから、その目的は果たしたわけである。不思議なのは、その日本人が、世界一の長寿国であることを忘れて、健康補助薬を飲んでいるアメリカ人や、ヨーグルトを食しているブルガリア人の真似をしていることだ。
 現代ニッポン人も、少しは彦十を見習ったらどうか。彦十はもともとが誘惑に負けやすい性質《たち》であり、易《やす》きにつく性向があるが、養生については見習うべきところがたくさんある。酒を飲んだら酔うのが酒に対する礼儀であり、うまいものを食べたらおかわりをするのが料理に対する行儀である──これが彦十の生活信条だ。少なくとも私には、こうした不養生をやれるのは健康な証拠であると思えるし、だいいち魔がささない人生なんてちっとも面白くない。「養生に身が痩せる」(健康を心がけるあまり、神経をすり減らして痩せてしまう)という格言もあるではないか。
 強調しておきたい。わたしたちは健康を目標にして日々を暮らしているわけではないし、長生きをするために生きているわけでもない。
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