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鬼平犯科帳の人生論45

时间: 2019-07-30    进入日语论坛
核心提示:● 自分の特徴を熟知せよ[#ここから5字下げ]「よくもしてのけた」 いつの間にか、長谷川平蔵が縁側へあらわれている。「お
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 ● 自分の特徴を熟知せよ
 
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「よくもしてのけた」
 いつの間にか、長谷川平蔵が縁側へあらわれている。
「おかげを、もちまして……」
 庭先へ両手をついた沢田小平次へ、平蔵が、
「いまの太刀打《たちうち》、かまえてしたことか?」
「いえ……自然に、あのようなことになりました」
「む。それでよい。お前は、実に大した腕前となっていたのだなあ」
[#ここで字下げ終わり]
[#地付き]「剣客《けんかく》」
 
 世に「一発屋」は多い。
 その名のとおり彼らはチャンスをものにして天下人の趣をもったのも束の間、あとがつづかずバンジージャンプさながらの急降下、あっという間に表舞台から消えていく。「実力がなかったのだ」といってしまえばそれまでだが、多くの場合それは自分の特徴と特長がわかっていないことに起因する。
 企業を例にとってみよう。
 何かで一発当てると、調子づいてすぐに�拡大路線�をとる会社があるが、たいがいそれが裏目にでてしまうのは欲に目がくらんで不慣れな分野にまで手を伸ばしてしまったことに起因する。つまり、みずからの得意と不得意を認識していなかったために起きた不祥事であることが多いのだ。
 個人の場合も同様である。
「一発屋」はたいてい分不相応なことに手をだして自滅する。これも自分という人間の特徴や得手不得手を見極めていないことにその原因を求めることができる。
 では、「一流」といわれる人たちは、「一発屋」と何が決定的にちがうのか。
 一流の人たちは「ひとりの人間がもっている能力と時間には限界があるから、不得意を克服するよりも得意な分野に能力と時間を充てたほうがよい」と考えており、「だから苦手分野では勝負はしない」と強く自分に言い聞かせている。職人気質があるといおうか、自分の取り柄にだけ情熱を傾注するのだ。「一流」といわれる人物は、ほぼ例外なくそうである。
 読者諸氏は真田健一郎という役者をご存じであろう。
 そう、テレビ「鬼平犯科帳」で同心・沢田小平次役をつとめたあの名優である。沢田小平次は「剣の達人」だが、真田健一郎はその剣豪ぶりを見事に演じきって申し分ない。まさに余人を以て代えがたい役者といってもよく、その演技は絶妙をきわめている(この役者のおかげで、一連の鬼平作品がどれほど深みを増したことであろうか)。
 新国劇出身の真田健一郎は、師匠に辰巳柳太郎という大役者をもったのだが、私の眼にはまさにこの二人の関係が、長谷川平蔵と沢田小平次の関係に重なって見える。平蔵と沢田が何においても徹底を好んだように、辰巳と真田も己れの芸の真髄を極めようとして精進した役者である。また、双方とも不慣れな分野に手をださなかったという点においても見事に重なり合う。おそらく真田健一郎という役者は、沢田小平次と同じく自分の取り柄を熟知しており、その得意とする技倆《ぎりよう》を磨いてきた人にちがいない。
 生前、池波正太郎は、真田健一郎のその気迫のこもった殺陣《たて》に「他の役者の追随をゆるさないだろう」と感嘆の声をあげたことがあるが、小生もまたこの役者に唸りっぱなしなのである。
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