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ミッドウェー戦記24

时间: 2019-07-30    进入日语论坛
核心提示:二十三 ミッドウェー北方百三十マイルの海上は、高度五百ぐらいに断雲が点々とあり、視界はあまりよくなかった。このあたりが、
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 二十三
 
 ミッドウェー北方百三十マイルの海上は、高度五百ぐらいに断雲が点々とあり、視界はあまりよくなかった。このあたりが、本日の主戦闘海面につらなる予定であった。
 橋本は、土屋の報告球の通信文を見て、敵の位置を友永に知らせようと思ったが、この機は隊内電話が故障して通じないので、いらいらした。友永は、車から軛《くびき》を解き放された馬車馬のように、先行してしまうので、なかなか第一中隊に追いつけなかった。思うに、友永は、自分が片燃料タンクなので、早く敵を発見し、主戦闘海面に到達して、魚雷を発射しないと、攻撃を終わらないうちに、燃料がなくなって、不時着することをおそれているのであろうか。何にしても異常なスピードである。それはそれとしてわかるのであるが、友永は、土屋の報告をみていないので、進路がどんどん左へ、つまり北へそれて行くのである。
 敵の母艦は東進しているので、もっと東の方、つまり、右の方に見えて来るはずであった。
 友永機の偵察員、赤松作少尉が、右前方に白い航跡を発見したのは、午前十一時半である。
「隊長、艦《ふね》が見えます」
「うむ、空母は?」
「は……」
 後席で双眼鏡をかざしていた赤松は、
「隊長、空母です、右四十度、距離三千、東へ進んでいます……」
「わかった!」
 友永は、真昼の光線の下で、白い航跡を引いている十数隻の軍艦を発見した。彼はその中央にある大きなワラジに注目した。損傷があるかないか。このとき、ヨークタウンでは、罐室員の必死の努力によって、速力が十五ノット出るまでに回復していた。飛行甲板は修理され、発着艦はまだ無理であったが、火災は消しとめられて、煙は消え、艦の傾斜はなかった。
 赤松は、この空母の速力を二十四ノットと判定し、友永は、まだ攻撃を受けていない“無傷”の空母であると判断した。
 橋本の二中隊では、五番機についていた赤城の中根がつうと前進して、彼の横に並んで手で右を指した。断雲の下に巨大な輪型陣が見えた。南洋の環礁のように見える輪型陣の中央に、わらじのような空母が、眼に沁みるように真っ白な波を蹴立てて、東進していた。十五ノットで航走するヨークタウンは、橋本の眼にも、二十ノット以上の高速に見えた。無傷の空母を叩かねばならぬという考えが、この空母こそ無傷の、新しく出現した空母である、という信念に変わり、その心理が、十四ノットを二十ノット以上に見せたのである。橋本は空母よりも、白い航跡の方を見ていた。涼し気だった。そろそろ渇きを覚えていた。はるかな前方上空に、キラキラと光るものが数を増しつつある。グラマンF4F戦闘機であった。(ヨークタウンは、日本機の再度の襲撃を予想して、三十機のグラマンを直衛として用意していた)
 橋本は操縦員の高橋利夫一飛曹に、全速で友永隊長機に接近を命じ、友永機の横に出ると、大きく右掌をふりおろして、空母の位置を示した。友永は了解して編隊を解散し、赤松に、「ワレ敵発見、イマヨリ突撃ス」と打電させ、隊内電話で、「突撃隊形造レ」と下令した。
 発艦前の打ち合わせで、一中隊は敵の向かって右、つまり、空母の左舷から、二中隊は向かって左からはさみうちにする予定になっていた。
 橋本の隊が、高度五百の断雲を縫いながら、輪型陣の外廓にさしかかった頃、左後上方に、パッと照明弾を打ち上げたような閃光が上がった。橋本がふり仰いでみると、マグネシュームを焚いたような、まばゆい光のなかに、飛行機の破片らしいものが、ばらばらになって落ちて行くところであった。六機の戦闘機隊をひきいて、護衛に続行した森の機が、高角砲の直撃弾を受けて分解したところであった。橋本は、飛散する破片のなかに、森の遺体を見ようとつとめたが、果たされなかった。海軍大尉森茂は、文字通り散華《さんげ》してしまい、一物も残さなかった。橋本は、その不吉な、しかし、美しい閃光のなかに、この世のものでないような、不気味な戦慄を感じとったが、彼はこれからの仕事の方が大問題なので、長くそれに見入っているひまがなかった。
 ヨークタウンを囲む輪型陣は重巡五隻、駆逐艦十一隻から成っていた。輪型陣の上空に入ると、敵の対空砲火は、突然、熾烈《しれつ》になった。大雪の日に、暗い部屋から、吹雪《ふぶき》のなぐりつける戸外にほうり出されたときの感じである。赤や黄のアイスキャンデーが、ふりしきる牡丹雪のように、間断なく四方から叩きつけて来た。どれもこれも、みな自分の顔に向かって来るように見えたが、通りすぎて見ると、それは当たっていないのであった。アイスキャンデーが自分に向かって来るたびに、橋本は、首をすくめたい欲望に駆られたが、それをしないことにした。すべてを操縦員の高橋兵曹の腕にまかせることにした。
 輪型陣の内部は、相撲《すもう》の土俵に似ており、拳闘のリングにも、またさらに一層、闘牛場の内部に似ていた。それは真剣勝負の場であった。喰うか、喰われるか、生命の最高度の燃焼がそこにあった。弧を描いて飛来する銃弾の弾道は、死の力学を伴っていた。橋本は、口のなかがからからになった。のどの奥に、丸っこい痰がからまって、いくら呑みこもうと努力しても、それが呑み込めなかった。彼は今までになく、緊張していた。平常の大脳と、全然別のところで思考しているように思われた。彼の四肢《しし》は、小脳とは別のところから命令を受けて、ぎこちなく働いているように感じられた。
 ここでは一つの取引が行われている、と考えてもよかった。彼は、五千万ドルの空母と、十八万円の攻撃機を交換しようとする、かなり虫のよい商取引の仲買人であった。彼は、その取引の手数料として、彼にとって無限の価値を持つ、自分の生命を、無償で支払おうとしていることをしばらく忘れていた。彼ののどの奥にしがみついている、丸っこい痰のかたまりだけが、それを知っているのかも知れなかった。
 グラマンF4Fが襲って来た。陸上空襲のときと違って、母艦の直衛戦闘機は、精悍であった。眼鏡をかけたモダンな虻のように、接近し、ウワーンという金属的な響きと共に腹を見せながら反転しては、またとりついて来た。橋本はそのたびに、けたたましく高橋に旋回を命じ、しばしば断雲のなかにとびこみ、何度も危地を脱した。後席の電信員、小山富雄三飛曹が、七・七ミリ機銃を連射して、グラマン一機に命中弾を与えた。引き起こしそこなったグラマンは、海中にとびこみ、大きなスプラッシュをあげた。小山は、さらに、去ってゆく別のグラマンを追い討ちした。機は旋回し、グラマンは後方にかわったので、小山は、尾翼を射ち続けることになった。
「おい、尾翼を射っているじゃないか」
 橋本が噛みつくように言った。尾翼に五つばかり穴があいたのを見て、小山はやっと射撃をやめた。——小山も昂奮しているな——と考え、橋本は、わずかなゆとりを感じた。
 断雲をうまく利用したおかげで、彼の二中隊は、一機の損失もなく、敵空母の左側、つまり、ヨークタウンの右舷前方千メートルの地点に到達した。彼はときどき、友永の隊に気をつけていた。攻撃精神旺盛な友永は、断雲に頼らず、高度二十メートルの低空で、まっすぐ母艦に向かって右側へ突っこんだ。もう魚雷を落とすころだ、と橋本が投下索を握ったとき、母艦は面舵をとりキューッと右に大きく転舵した。橋本の眼前で、母艦の艦首が大きな白泡を噛みながら、左にふれ回って行った。——しまった、射点が変わったぞ——橋本は、尻のあたりに、むずむずするものを感じた。彼の中隊は、母艦に向かって左側から右側、すなわち左舷に出てしまった。しかし、不運なことに、母艦の左舷をねらって直進していた友永隊の五機は、母艦の艦尾から追撃する形になってしまった。最悪の射点であった。
「おい、大丈夫か!」
 橋本は、うわずった声で操縦員の高橋に聞いた。
「大丈夫です、このままやりましょう」
 高橋が疳高い声で答えた。
 友永が狙っていた射点に、橋本の隊が占位することになってしまった。もう距離は、八百をすぎて、七百に近かった。母艦はまだ変針しつづけていた。グラマンF4Fは、まだ攻撃を続行していた。橋本機は、プロペラが波を切るほどの低空で、直進を続けた。ヨークタウンの甲板上に、五、六機の飛行機が繋止《けいし》してあるのが見え、舷側の機銃が、水平射撃で赤い火を吐き続けていた。被害は先に接敵した友永隊に多かった。橋本は、自分が決断の時点に達したことを悟った。ヨークタウンに対する射角は六十度、適正角度と言えた。——いまだな、教科書通りだ——そう考えて、橋本は、
「投下!」
 力一杯投下索を引いた。八百キロの九一式航空魚雷は、九七艦攻の腹をはなれ、腕白小僧をほうり出した機はふわりと浮き上がった。
「艦首に突っこめ!」
 飛沫をあげて海面に落下した魚雷が航走を始めたのを確かめると、橋本は、そう絶叫した。高橋は、海面すれすれに、赤ブーストの全速力で、ヨークタウンの艦首めがけて突進した。魚雷の命中も大事であるが、この突進が三人の搭乗員を救うか否かの瀬戸際でもあった。下の海面がきめのこまかい、青と白の絣のように、無数の糸で、文様を織《お》り出した。橋本は友永の隊を見た。すでに三機に減った友永の隊は、ヨークタウンの艦尾を追いながら、うしろから左舷後尾に出て魚雷を発射しようと試みていた。橋本は、瀬戸内海で行われた演習のある場面を想い起こしていた。——ああ、まずいな、あのままでは、射点が後落して、とても当たらない。思い切って前進し、右舷の前方まで出てくれるとよいのだがな——彼がそう考えてみている間に、尾翼に黄色の線を二本つけた友永の隊長機は艦尾に向かって直進を続けた。
 機上の友永は、すでに銃弾をうけていたが自分でも驚くほど冷静であった。片翼だけの燃料タンクで、飛竜を発艦するときから予想されていた情景が、いま、現実に展開されつつあった。赤城を含む三艦が被爆したときから、彼の覚悟は決まっていた。——今日は死ぬな、いや、死なねばならんのだ。おれが死ぬことによって、日本の勝運を取り返さねばならぬ——彼は、そう決意して、飛竜を発艦していた。友永は後落した射点で、一応魚雷を発射した。魚雷は、ヨークタウンを追うように並行して走り始めた。ヨークタウンは十数ノットで、九一式航空魚雷は五十ノットのスピードを持っているのであるが、急にはヨークタウンに追いつかないようであった。
 魚雷を発射した後も、友永は敵空母を追撃した。この空母の攻撃隊は、赤城をやったのか、加賀をやったのか、友永は知らなかった。しかし、味方を破壊したこの空母を無傷でおくことは、友永には許されていなかった。彼はすでに身に数弾を受け、血のしぶきが、操縦席のなかで舞っていた。グラマンと、対空砲火と両方からの命中弾を受け、左の燃料タンクからも、ガソリンが白い糸を引いていた。——いずれにしても、もう飛竜には帰れない——友永の脳裡を、九州で待っている、よし江と丈一郎の姿がちらとかすめた。——さらばだ——友永は機上から、別れを告げた。ヨークタウンの、黒い崖のような後尾の艦側が眼前に迫っていた。艦尾では、海水が白い渦をつくりながら押し出されており、そこに出来ている吸いこみ気流が、友永の機をひきずりこんだ。友永機は艦尾に体当たりした。
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