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ミッドウェー戦記30

时间: 2019-07-30    进入日语论坛
核心提示:二十九 飛竜の艦底に近い右舷機械室では、分隊長の梶島栄男大尉が苦い顔をしていた。朝からの戦闘運転で疲れていたが、赤城など
(单词翻译:双击或拖选)
 二十九
 
 飛竜の艦底に近い右舷機械室では、分隊長の梶島栄男大尉が苦い顔をしていた。朝からの戦闘運転で疲れていたが、赤城など三艦が被爆したという情報を艦橋から受けたときは、機械室も憂色に包まれ、飛竜の攻撃隊だけが攻撃すると聞いて、緊張していた。
 敵空母に対して、二回の攻撃を行い、最後に残っている一艦に対して、第三回目の攻撃を行うという連絡があったので、彼は先ほどから全速待機を命じ、艦橋からの指令を待っていた。
 機関長の相宗《あいそう》邦造中佐は、赤城がやられたと聞いたころから、急に元気がなくなった。神経質な彼は、不吉な予感に体を縛られ始めたのかも知れない。そして、敵弾の命中らしいドカーンという激しい音響が、上部から伝わって来ると、顔色が蒼ざめ、よろめくように一区画となっている機関科指揮所に入ってしまった。梶島がガラスの窓ごしにのぞくと、相宗は、防毒面と毛布を抱えて机にもたれ、艦の震動に身をまかせていた。唇の色がうすかった。梶島は苦々しげにそれを眺めた。
 チリン、チリン……と速力通信器が回って、「両舷前進全速」が艦橋からかかって来た。心得た松岡兵曹は、すぐにハンドルを回して、蒸気圧力を一杯に上げた。機械は凄い音で回転を増し始めた。急に艦体の震動が増して来た。続いて、頭の真上に、耳の痛くなるような衝撃があり、更にまた左前方から衝撃が来た。艦はその度に、今にも分解しそうに揺れ動いた。鉄板を接合しているリベットがゆるんで、はずれてしまいそうな震動であった。
 梶島はすぐに電話で艦橋を呼んで、デッキの状況を訊いた。
「三弾命中、目下防火中。機関科の状態はどうか」
 と機関参謀の声がした。乾いた声で、無愛想に聞こえた。
「機関科異常なし。全力運転可能」
 と答え、それを知らせようと、機関科指揮所に近よると、相宗は、あっちへ行け、というふうに、手で追う真似をした。何も聞きたくないのかも知れなかった。
 飛竜は三十六ノットの全速で、西に走っていた。松岡兵曹は、自慢の鬚をひねり上げ、速力計と回転計をにらみつけていた。
 艦橋では、山口多聞少将が、沈痛な顔で加来《かく》艦長と顔を見合わせていた。
「しまったですな、あれからすぐに攻撃隊を出してしまった方がよかったですかな」
 加来はそう言ってから、悪いことを言ったというふうに、視線を落とし、右手の人差指で小鼻のわきをこすった。
「うむ……」
 山口は陰鬱にだまりこくった。
 被害の様子では、もう母艦としての使用は不可能だった。彼はいま、ある宿命を感じていた。あれだけ厳重な対空見張のなかを、どうかいくぐって来たのか。やはり、気がゆるんだんだな。おれの士気の挫折が、艦全体に影響を及ぼしたんだ……。彼は悪夢のような敵弾命中の一瞬を想い起こすと、——とてもかなわない。おれのような一個人の微力では、どうにもならない大きな動きがそこにある。それが戦争なのだ。それが人生なのだろう——と、正直に兜をぬいでいる自分を見出していた。
 飛竜はもう、その戦闘のホットポイントからは逸脱した。あとは、日本に帰れるかどうかである。機関が無事なのが、唯一の救いであった。しかし、帰ったところでどうなるというのか。蒼竜もやられてしまった。おれの航空生活も、このへんがピリオドの打ちどころだろう——また彼はこう考えた。——自分はいい、自分はいいが、死んで行った友永や、小林や多くの整備員や搭乗員をどのようにあつかうか。どこに彼らの死の意味を見つけてやるべきか……せめて、予定通り、いま一度攻撃出来たらな——その最後の攻撃を許してくれなかった、米軍の奇襲が、山口には恨めしかった。——武士の情というものはないのか、それがあったらな——痛みが下腹からこみあげて来た。無意味なことであった。戦場には、そのような思いやりのある神が不在であることを、身にしみて熟知しているはずの山口であった。——未練だ。今一回攻撃してみたところで、あの兵力でどう戦局が変わるものか——と肚のなかで打ち消す心境にたどりついていた。
「こうなると、いっそ、もっと早く日が暮れてくれるといいですな」
 加来も、日本への帰投を考えていた。
 沈みそうで、なかなか沈まぬ南国の夕陽を、山口はガラスの割れた窓からみつめていた。入陽《いりひ》は、艦首の左舷にあった。日本の方角に沈む、血のように紅い夕陽であった。
 血のように無惨な色は、飛行甲板の破孔の附近にも渦を巻いていた。
 
 疾走する飛竜の南方で漂流する、赤城、加賀、蒼竜の周辺にも、斜陽の光線と共に、死の色が漂っていた。そのなかでただ一人、楽観的になっている男がいた。
 ウォルドロン少佐のひきいるホーネットの雷撃隊のなかで、ただ一人生き残ったジョージ・ゲイ少尉である。彼の機は、藤田怡与蔵大尉のひきいる直衛戦闘機隊のために、蒼竜の近くで撃墜されたが、ゲイの体は無事であった。しかし、偵察員も、電信員も零戦の二十ミリ弾をくらって戦死していた。
 ゲイは、カボック(救命胴衣)の力で辛うじて浮いていた。この戦いで、アメリカが勝つとは信じられなかった。海面にスプラッシュをあげるほとんどの飛行機が、星のマークであった。やはり、JAPはタフだ。おれもいずれやられるだろう。そう観念を決めこんでいた。ところが、ゲイの指先がふやけて間もなく、近い所で煙が立ち上った。それも一条ではなく、三条である。うねりにゆり上げられたとき、彼は見た。三隻の空母が燃えているのを……。——やったぞ——彼がすぐに想い浮かべたのは、眉のけわしいウォルドロン隊長のことであった。アパッチの名誉にかけて戦った隊長の死も、これで意義があることになろう。この戦いは、ひょっとすると、アメリカ側の勝ちかも知れぬ、と彼は安心するようになった。
 そして、彼の防水腕時計の針が、午後五時を回ったころ、はるか北西の水平線に茶色の煙が高く立ち上っているのを、波の頂点に来たとき、ゲイは認めた。はじめ、彼は味方の空母がやられたのではないか、と疑った。しかし、ホーネットは、少なくとも百マイル(百八十キロ)は北にはなれており、ここから肉眼で見えるはずはなかった。
 ——してみると、四番目のJAPの空母だ。やったぞ——。
 ゲイは、水の上に右拳を出すと、スナッチを鳴らした。湿った音がした。
 ——もし、アメリカがこの航空戦に勝ったのならば——とゲイは考えた。おれも、うまくゆくと、救助されるかも知れぬ。物事は、うまくゆき出すと、万事うまくゆくというからな……。ゲイは楽天的になって来た。彼は、その名前の通り gay(陽気)な男であった。波にゆられながら、彼は口笛をふいた。波の底深く沈んだとき、彼は蒼い天空に星座を見たように思った。やがて、太陽は西の水平線に近づいて行った。戦闘が終わりに近づいたことをゲイは肌で感じた。しかし、おれが救助されるのは、そう近いことではあるまい。それまでは、滅多にみることの出来ない、この大洋を、浮かぶ壮大な戦場と、それを照らす夕陽が刻々に変化するのを見物しようと彼は考えていた。(ジョージ・ゲイがアメリカの飛行艇に発見され、救助されたのは、翌六日の朝であった。ホーネット雷撃隊中唯一人の生存者の話は、新聞や雑誌に大きく紹介された。筆者はアメリカの捕虜収容所で見たライフの広告記事に、海面を漂流する彼の絵が大きくのっているのを見たことがある。セブンアップかコーラのコマーシャルで、彼が漂流中、心から欲したのは、この一本の清涼飲料水であった、と書いてあった。しかし、ゲイの手記によると、彼は漂流中一度も清涼飲料水を飲みたいと考えたことはなかった。もし、生還すれば、同僚によい土産《みやげ》話が出来るだろう、と考えたことはあったけれども……)
 
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