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テーブルの雲31

时间: 2019-07-30    进入日语论坛
核心提示:ホーロー讚《さん》 ちょっと俗な言い方になるけれど、昔の道具には触って快い、なにかこう「持ちごたえ」のようなものがあった
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 ホーロー讚《さん》
 
 
 ちょっと俗な言い方になるけれど、昔の道具には触って快い、なにかこう「持ちごたえ」のようなものがあった。たとえば、黒光りする鉄の鍋《なべ》、重い木の蓋《ふた》のついたお釜《かま》、しっくりと柄《え》の太い片手鍋、頑丈《がんじよう》な竹のザル等々、それを触って仕事をすることに「果報」を感じるような力が込められていた。
 それが、どうも面白からぬものになってきたのは、あの薄っぺらいアルマイトの調理器具、ペナペナしたプラスチックのザルなんぞが元凶に違いない。合成樹脂の白いまな板とくると、私のもっとも忌《い》み嫌《きら》う種類の道具で、いくら衛生的かしれないが、ああいう道具の上でなにかをしようとはついに思わない。持った感じが、触った感触が、じつに不愉快である。庖丁《ほうちよう》がコツンと当るその刃の衝突する感じが、まことに論外にいやである。それから、ステンレスの鍋やフライパンというもの、これもどうかと思う種類の器具である。私は、ステンレスの鍋で湯が沸騰《ふつとう》するときのビシビシと水を痛めつけるような感じや、あの始末におえない焦《こ》げ付きやすさを、いかにも憎むのである。
 ここに、私が愛してやまない、調理器具のお手本ともいうべき道具がある。安くて丈夫な白いホーロー引きのザルと計量ジャー、それに平底ボウルである。
 ザルは、むろん全部鉄で出来ていて、取手が付いていて、しかも足がある。鉄だから重い。それで、頑丈な足がしっかりと支えるので、流しの中でしっかりと大地を踏み締めて立っている。そこへ、茹《ゆ》でたてのスパゲッティをザァッとあけるとしようか。このとき私は煮え立つ重い大鍋を両手に持って、そのままザルの中にぶちまける。なにせこいつは自分の足で立っているので、手で持ったり押さえたりする必要がない。で、盛大に湯をあけると、もうもうたる湯気の向こうにツルリと茹で上がったスパゲッティが見えてくる。そこで、鉄の丈夫な取手を持って、一気に湯を切るのだ。そのときの安定した気持ちの良い持ちごたえ! ペナペナプラスチックなんぞは、話にもならぬ。これは、イギリスの片田舎の骨董市《こつとういち》で買った。新品だってむろん手に入るのだが、こういうものは古物がよろしい。なんだかイギリスのおばあさんの微笑《ほほえ》んだ顔がザルの向こうに見えてくるようでネ。蕎麦《そば》を茹でてよし、ジャガイモを茹でてよし、どうして日本人はこういう良い道具を使わないで、プラスチックのザルなんか使うのだろうと、不思議でしょうがない。
 計量ジャーは、いつぞやドイツのデュッセルドルフに行ったときに、町のスーパーマーケットで買った。ジャーが透明でなければならないと思うのは単なる思い込みに過ぎないので、実際はそんな必要はさらにない。計量の機能は、この内側に付けられた目盛りで充分に果たされる。それどころか、流しに置いて上から水を注ぐその位置関係と視線の方向からして、実はこの方が使いやすいのだ。そのうえで、たとえば火の側《そば》に置いても平気、落しても壊れず、このジャーの重宝なことは、使ってみるとよく分る。水を量るのに使って便利なことはもちろんだが、この形のおもしろさ、質感の重厚さからして、たとえばドライフラワーを飾ったりしてもそれなりに眺められる。
 ボウルもまた、ドイツの同じスーパーで買ったものだ。大中小と三種類あったが、旅先のこととて中と小を三つずつ買った。たとえば、天ぷらを作る時に、各種の材料を小分けにして、このホーローのボウルに入れておく。普通の丸いボウルに比べて、底が平らで安定なことこの上ない。小さいから場所を取らないし、だいいち見た目にきれいで料理を楽しくしてくれる。夏ならば、この白いボウルに氷水を入れ、そこに朱色に熟した枇杷《びわ》の実を幾つか浮かして、ヒンヤリと食卓に供する、なんてのも美しかろう。
 そして、大事なことは、三つともその重宝さもさることながら、手に持ったときの、あのしっくりと「持ち重り」のする、その快い触り心地なのである。
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