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テーブルの雲47

时间: 2019-07-30    进入日语论坛
核心提示:人体の不思議 人体というものは不思議である。 パリで中華料理を食べていたとき、豆腐の中に、硬い石が入っていたのを、私は勢
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 人体の不思議
 
 
 人体というものは不思議である。
 パリで中華料理を食べていたとき、豆腐の中に、硬い石が入っていたのを、私は勢いよく噛《か》み砕いてしまった。ガリンという音と共に滅法《めつぽう》な痛みが脳天に走り、目から稲妻《いなずま》が出たかと思った。私は、この店で、|豆腐で歯を痛めた《ヽヽヽヽヽヽヽヽ》初めての客となったが、こんなのはあまり自慢にはならない。で、その日から、この右の奥歯が恐ろしく痛んで、もはや豆腐も噛めない程になった。
 イギリスへ帰って、さっそく歯医者に行った。歯医者に「豆腐で歯が割れた」と言うと、彼は笑いながら子細に奥歯を調べて言った。
「フーム、この右の奥歯にはごくごく細ーいひびが入っておるな。しかしこの程度のひびを貼り付ける方便もないが……、どうするね、なんならいっそサッパリと抜いて上げてもよろしいが」
 サッパリと抜かれてはたまらないので、私は我慢することにした。すると、不思議じゃないか、あれほどビリビリと痛んだのが、二週間もすると、薄皮を剥《は》がすようにおさまり、だんだんものを噛んでも大事ないようになった。
 かくて日本に帰ってきた頃には、くだんの奥歯で煎餅《せんべい》さえ噛むことが出来るくらいになっていたが、それでも物が歯に当る角度によっては、目のくらむような激痛が走って私を悩ませた。ところが、ある日車を運転しながら煎餅を齧《かじ》っていると、突然かの右の奥歯がポロリと欠けた。その歯のカケラは案外もろくて、そのまま噛んだらグズグズ崩れたので、煎餅と一緒に食べてしまった。しかし、その奥歯の欠けは神経には触らぬ程度の軽微なものだったので、すぐ歯医者で表面を平らに削ってもらって一件落着となった。すると、驚くべし! その日を境に、さしもしつこく私を悩ましていた痛みが、嘘のように消えてしまったのだ。以来、何でも斟酌《しんしやく》なしに噛み砕いて一向に平気である。
 あぁ、助かった、と思って喜んでいたら、そうは問屋が卸さなかった。この歯の一部欠落によって口の中のたたずまいがちょっと変ってしまったらしい。その結果、その欠けた歯でしょっちゅう舌を噛んでしまう事故が起こるようになったのである。人体のシステムはまことに精妙である。一つが狂うと次々と狂ってくる。だから、豆腐で歯を痛めたりすると、これは一生たたるのだとつくづく感じ入った。
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