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テーブルの雲50

时间: 2019-07-30    进入日语论坛
核心提示:悠々《ゆうゆう》と独歩せよ 子供が生まれた時、私たちは、天にも昇る嬉《うれ》しさを味わった。ほぼ三年間望んで授からなかっ
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 悠々《ゆうゆう》と独歩せよ
 
 
 子供が生まれた時、私たちは、天にも昇る嬉《うれ》しさを味わった。ほぼ三年間望んで授からなかった末に生まれてきた子だったからである。さしあたり、どうやって育てるかという確信があったわけではない。むしろ、最初の子の時は無我夢中だったというのが当たっているだろう。しかし、私たちには私たちなりの考えがあって、なにか既成の育児書などに頼らずに、夫婦共同して最善を尽くすことで育てたいと思ったのだった。
 まず、最大の目標は、この子たち(私たちには、いま大学生になった男の子と、高校生の女の子がいる)を、「ひとかど」の人物に育成することである。「ひとかど」とは、文字どおりなにかどこかひとつ「かど」があることだ。「かど」は、突出して目に立つところ、とそんな風に考えたらよかろうか。それがただどこかの大学の一芸入試みたいに、なにか得意技があればよい、なんてのじゃなくて、それが社会の役に立つレベルでのことでなければならぬ、それが私たちの考える「ひとかど」である。素人|天狗《てんぐ》じゃなにもならないのである。なにごとか立派なプロとなって悠々と独歩せよ。しかし、それは、考えてみれば大変な茨《いばら》の道である。突出して目立つからには、人から打たれることもあるだろう。みんな横に並んで目立たぬように仲良く手をつないで、というこの日本の社会の中では、こういう考え方は異端である。みんながなにをやっていようと、自分がやりたくなければやらなくてよい。そのかわり、それによって生ずる孤独には耐えなければならない、それが「ひとかど」の原理である。そうなるためには、まず「おのれ」が大切だ。おのれを持《じ》して譲らない勇気が必要だ。しかし、命や身体が損なわれては元も子もない。したがって、危険なことには決して近づくな。かくのごとく私たちは教えてきた。
 できるだけ、彼らが望むことは叶《かな》えてやろう。望まぬことはやらなくて済むように力をかしてやろう。なにか悪戯《いたずら》をしても、その理由を聞いてことの善し悪《あ》しを説諭しよう。絶対に殴ったり怒鳴ったりはすまい。彼らがなにかにチャレンジして、失敗しても家に帰ってくればすべてが許される、とそういう場所(家庭)を用意しておいてやろう。そうして、家の中では、しょっちゅう冗談ばかり言って、猥褻《わいせつ》なことも下らぬことも、すべてそのまま見せて育てよう。水清きに魚|棲《す》まず、俺《おれ》たちもしょせんは矛盾に満ちた人間なのだ、聖人君子ぶることはすまい。男女の差別は一切排除しよう。いつもじっと彼らを見守っていよう。そのようにして、一生懸命、全力を尽くして仕事も子育てもやろう。これが私たちの個人主義的子育ての原理である。結果はこれから出るけれど、すくなくとも、大勢に流されない人間に育ちつつあるだろうことだけは信じてもよさそうに思われるのである。
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