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テーブルの雲68

时间: 2019-07-30    进入日语论坛
核心提示:買える図書館 書誌学者という仕事の性格上、世界各地の図書館で過ごす時間が長い。 にもかかわらず、じつを言うと私は図書館が
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 買える図書館
 
 
 書誌学者という仕事の性格上、世界各地の図書館で過ごす時間が長い。
 にもかかわらず、じつを言うと私は図書館が好きではない。こういうことを言うと不見識なようで気がさすのだが、こと「読書」というタームズにおいて言うならば、私はほとんど図書館を利用しない人間である。人から借りた本、というのは、読んでも身に付かないというか、なにかこう心の重要な部分に記銘されないというか、読んだことが|生きた知識《ヽヽヽヽヽ》として蓄積していかないのだ。「読む本」はすべからく買って読むべし、というのが私のかねてからの持論である。そして、買ってひとたび書庫に入った本は、決して売ったり捨てたりしない。それも私の信念である。その本がいつも座右にある、ということ、それが読書の記憶をいつも反芻《はんすう》させ、印象を心底に固着せしめるのだ、と私は考える。
 高校時代、私は早稲田に住んでいたので、学校の帰り道や散歩のついでに、いつも古書店を冷やかして歩いた。それは私の読書を著しく進展させたけれど、学校の図書室というところには一向に行かなかった。大学生になっても、私は読書の目的で図書館を利用した覚えが殆《ほとん》どない。そのかわり、年じゅう本屋にばかり行っていた。けれども書店は、図書館と違って蔵書目録なんかないので、目的の本を捜すというのには甚《はなは》だ不便だった。捜しあぐねて店の主人に聞くと「さぁて、どうでしたかねぇ……」などといかにも頼りないことが多かった。
 それから、長じてイギリスのケンブリッジに行き、そこでもやっぱり図書館で仕事をしながら、図書館の本は殆ど読まないで、しばしば「ヘファーズ」という本屋に出かけた。この書店は、ジャンル別に整然と分類して棚《たな》に収めてあり、そのセクションごとに当該の分野のスペシャリストがデスクを構えて控えていた。それゆえ、捜している本について彼らに尋ねると、たちどころに適切な返答が返ってきた。これはまるで図書館のようだ、と私は甚だ感心した。ただ、違う点は、そこに所蔵されている書物は、欲しければすぐその場で買うことが出来るということである。言わば「買える図書館」なのだ。
 ひるがえって、ヘファーズのような書店は、わが国にはほとんどない。しかし、学問というものの発達のためには、そういう書店こそ、じつは是非必要だと思うのである。
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