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ルンルンを買っておうちに帰ろう10

时间: 2019-07-30    进入日语论坛
核心提示:男にモノを買ってもらう女は、やはりうらやましい 男にモテないということのデメリットは、どんなことがあるだろうか。 ひがみ
(单词翻译:双击或拖选)
 男にモノを買ってもらう女は、やはり……うらやましい
 
 男にモテないということのデメリットは、どんなことがあるだろうか。
 ひがみっぽくなる、同性に尊敬されない、などといろいろあげることができるが、物質的な面でもその差は大きいものがあるように思う。
 私の友人の中にも、男はモノを買ってくれる存在だと信じきっている女たちが何人かいるが、その自信はほとんど無邪気といっていいぐらいである。
「昨日さ、ホテルのアーケードで素敵なブローチ見つけたの。給料日前だとわかってたけど買わせちゃった。ふ、ふ、あいつったら青くなってたわ」だって!
 あ〜ん、くやしいよおー。
 長いおんな人生の間で、私はいったい男にモノを買ってもらったことがあるだろうか。
 そういえば、大学生の頃一回、バイトの金が入ったからといって、BFに籐《とう》のバッグを買ってもらったことがあった。ふたりで海を見に行った帰り、横浜の中華街でだ。
 値段は確か千円だった。
 男にモノを買ってもらうなどというのは、私にとっては全く画期的なできごとであり、その時の彼の表情から財布の色まではっきりとおぼえている。
 よっぽど嬉しかったのであろう、その籐のバッグは取っ手が取れるまで長い間使い、古くなったあとは下着入れにして大切に使っていた。引っ越しの時に捨てたのと、彼が結婚したという噂を聞いたのとどっちが先だったかな。
 恥をいうようであるが、男にモノを買ってもらったのは、あとにも先にもこれが最後だったような気がする。
「そのかわり、いつもあんなにおごってもらうからいいじゃない。あなたのあの食べっぷり見てたら、そのあとなにかを買ってやろうなどという気はたいていの男は消えうせるね」
 などと、人はいうかもしれないが、たとえマキシムでおごってもらおうとも、おごりはおごり。ありがたいと思う気持ちにはなっても、甘い嬉しさにはつながらない。もちろん小さなプレゼントやおみやげは何度かもらうが、やはり「買ってもらう」というトキメキにはかなわない。
 男にモノを買ってもらうという行為には、非常に性的なにおいがする。ちょっと女の陰湿な高慢さが漂っている。それがすごくいい。
 男といっしょに夜のショウウインドーの前に立ち、媚びたり、すねたりしながら、目的のものを買わせるなんて、経験したことはないけれど格別のものであろう。
 そしてその後はふたり、なにか特別のことをするのであろう。さもありなん。
 私がうんと若い頃、非処女というのはわりと珍しい時代があった。友だちからの情報もペッティングどまりで、
「下の方は許さなかったワ」
 などという話が尊敬をもって迎えられていた時期があった。ホント。
 そんな中にあって、ふたつ年上のM子は社会人ということもあり、私の友人の中では数少ない体験者であったから、ウブな私はもう興味シンシン。まるでもの珍しい動物と対するようなやり方で、からだをジロジロ見たり、いろいろと聞き出したりしていた。
「ねぇー、ヘビ嫌い?」
「もちろんじゃない」
「おかしいなー、本に書いてあったけど体験者ってあんまりヘビこわがらないんだって。ヘビは男性のナニの象徴だから、バージンはすごくこわがるけど。えーと、じゃあ、とがったもの見てどう思う?」
 よくもまあ、あんなバカバカしい話によくつきあってくれたと思う。いま思うとけっこうからかわれてたのかな、わたし。
 話はかなりそれたが、非処女に興味をもつのと同時に、私は非童貞(そんな単語あったっけ)の研究にもかなり熱心だった。そして当時得た知識のひとつに、非童貞というものは、かなり金がかかるということがあった。
「まあ一回女を抱こうと思えば、一万から二万かかるね」(当時トルコというのは、そんなにポピュラーじゃなかったと思う)
 と同級生の男の子はいった。
 私はその金額の多さにびっくりしたものだ。そして女を買うために一生懸命にバイトしているという彼の話を聞いて、本当に私は悲しくなり同情してしまったのである。
 その次の日ぐらいに私はM子と会ったのだ。M子はひどくうきうきしていた。
「彼のボーナスが出たのよ」
 ふうーん。
「それでどっかで食事しようかといったんだけど、それより残るものがいいって私がいって、ワンピース買わせたの。これ八千円もしたのよ」
 その時、目からウロコが落ちるという表現がぴったりするぐらい、納得できたことがあった。
「そうか、わかった!」
 私は叫んだ。
「考えてみると安いもんだよね。週に一回女買うと思えば、年に二回ワンピース買うことぐらい。ネエーッ」
 M子との絶交状態はかなり長くつづいたと思う。男をしらない女の無知というものは、時としてものすごく残酷なことを平気でいうものである。
 こういう可愛気のないことばっかり平気でいう性格だから、私はM子のように、男にモノを買ってもらう女に成長しなかったのであろうか。
 あれから十年たって、私もおかげさまでM子と同じ身の上になったが、なぜか男に貢がせるのは本当に縁がない。一回そういうことをするたびに、銀座のママなんかダイヤモンドの指輪を買ってもらうらしい。同じ女と生まれ、同じようなことをするのに、どうしてこんなに差がつくのであろうか。
 まあ銀座のママと比較する方が間違っているのであろうが、私と同じように美貌もテクニック(!)もそう差がないであろうフツウの女でもいろいろモノを買ってもらうのにどうして私は買ってもらえないのか。
 あんまりだ。
 ここまで書いて思いあたることがあった。私って男にモノを買ってもらえない身の上[#「身の上」に傍点]なのね。
 考えてみたって自分ひとりの買い物だっていろいろ問題多いじゃない。このあいだも「ボール」の店員に、
「これ以上の、ジーンズのサイズありませんよ」
 ってバカにされたばっかりだ。
 まさか男といっしょに、伊勢丹のクローバーコーナーに行けないわよね。靴を買ってもらうとなれば、いっしょに汗だくになって、甲高、幅広のサイズに合うのを探さなきゃならない。アクセサリーにしたって、ブレスレットはまず五本に三本はアウトだもんね。
 この体格と自信のなさが、私をつつましやかな女にしていたのだ。
 そういえば、男にモノを買ってもらう女って、肩の薄い、きゃしゃなイメージがある。あれこれ考えているうちにOLたちの豪華バッグがとてもヒワイなものに見え、思わず顔を赤らめてしまう私です。
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